平成14年1月28日
社会保障審議会福祉部会
1.はじめに −地域福祉推進の背景と必要性−
- 地域社会の変容等により、不安やストレス、自殺やホームレス、家庭内暴力、虐待などの生活上の諸課題が複雑多様化
- 他方、ボランティアやNPOなどの活動が活発化し、社会福祉を通じた新たなコミュニティ形成の動きも顕著
- 個人の尊厳を重視し対等平等の考え方に基づき、地域住民すべてで支える社会福祉に変わっていくためには、地域住民の参加が不可欠であり、その自発的、積極的な行動が重要
- 社会福祉を特定の人に対する公費の投入と考えるのではなく、むしろ福祉活動を通じて地域を活性化させるものとして積極的な視点でとらえることが必要
- 地域福祉計画が21世紀の福祉を決定づけるものとして、自治体の首長、議会のリーダーシップを期待
2.地域福祉推進の理念
- 地域福祉推進の目的
「福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるようにする。」
- 地域福祉推進の理念
(1)住民参加の必要性
地域福祉の推進は、地域住民の主体的な参加が大前提であり、「地域住民の参加がなければ策定できない」ことが地域福祉計画の特徴
(2)共に生きる社会づくり
地域福祉の推進は、多様性を認め合う地域住民相互の連帯が不可欠
(3)男女共同参画
地域福祉の推進は、男女共同参画の視点が必要
(4)福祉文化の創造
地域住民自らが主体的にかかわり地域福祉を推進することが、それぞれの地域に個性ある福祉文化を創造していくことにつながる。
3.地域福祉推進の基本目標
- 生活課題の達成への住民等の積極的参加
- 地域社会の全構成員(住民等)がパートナーシップの考えを持つことが重要
- 利用者主体のサービスの実現
- 利用者の生活課題を総合的に把握し、適切なサービスが提供される体制を身近な地域において構築することが必要
- サービスの総合化の確立
- 多様なサービスの十分な連携による総合的な展開が不可欠
- 生活関連分野との連携
- 福祉、保健、医療と教育、就労、住宅、交通、環境、まちづくりなどの生活関連分野との連携が必要
4.市町村地域福祉計画
(1)計画に盛り込むべき事項
(1)地域における福祉サービスの適切な利用の促進に関する事項
- 目標の提示
- ニーズ調査、サービスの点検、緊急性や目標量の設定
目標達成のための戦略
- 相談支援体制の整備
- 必要なサービスを利用できる仕組みの確立
社会福祉従事者の専門性の向上 - サービスの評価等による利用者の選択の確保
- サービス利用に結びついていない要支援者への対応
要支援者発見機能の充実、ソーシャルワーク体制の整備、福祉事務所の地域福祉活動等の充実・支援
- 利用者の権利擁護
- 地域福祉権利擁護事業等の整備
(2)地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項
- 多様なサービスの参入促進及び公私協働の実現
- 福祉、保健、医療と生活関連分野との連携方策
(3)地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項
- 地域住民、ボランティア団体、NPO法人等の活動への支援
情報、知識、技術の習得、活動拠点に関する支援
地域住民の自主的な活動と公共的サービスの連携
- 住民等の意識の向上と主体的参加の促進
地域住民、サービス利用者の自立
住民等の主体的な生活者、地域の構成員としての意識の向上
住民等の交流会、勉強会等の開催
- 地域福祉を推進する人材の養成
(4) その他
(2)計画策定の体制と過程
(1) 市町村行政内部の計画策定体制
関連計画や生活関連分野との連携を確保するため、関係部局が一堂に会した検討会の開催や部局を横断したプロジェクトチームの立ち上げも有効
(2) 地域福祉計画策定委員会
地域住民、学識経験者、福祉・保健・医療関係者、民生委員・児童委員、市町村職員等が参加する地域福祉計画策定委員会を設置
策定委員会は原則として公開とし、進捗状況を適宜公表するなどの配慮が必要
(3) 地域福祉計画策定方針の決定
住民等の意見を十分反映させる旨の策定方針を決定することが必要
(4) 地域福祉計画の目標の設定
具体的で計画の達成度の判断が容易な目標を示す工夫が必要
(5) 地域福祉計画策定の手順
地域社会の生活課題を発見し解決するには、住民等の主体的参加が欠かせないことを、まず住民等に伝えることが重要
住民等の参加を得るためには情報伝達が重要、特に支援を必要とする人々への配慮が必要
(6) 市町村社会福祉協議会の役割
社会福祉協議会は、地域住民の参加の推進やボランティア、福祉教育、まちづくり等の実績を有しており、計画策定に積極的に協力することを期待
(7) 社会福祉法人の役割
社会福祉法人は、幅広い社会福祉の専門機能を有しており福祉サービスの拠点としての役割を期待
(8) 民生委員・児童委員の役割
民生委員・児童委員は、地域福祉活動の担い手となることを期待
(9) 地域福祉圏域及び福祉区の設定
- 他の法定計画との整合性の確保等にかんがみ、必要に応じて圏域を設定
- 地域住民の生活に密着し、一定の福祉サービスや公共施設が整備されている区域を「福祉区」として住民参加の体制を検討
(10) 計画期間及び公表等
- 計画期間は、概ね5年とし3年で見直すことが適当
- 計画を評価する体制の確保が必要
(11) 他の計画との関係
- 地域福祉計画と他の福祉関係計画との関係
- 高齢者、障害者、児童等に係る計画との整合性及び連携を図り、これらの既存計画を内包する計画として、地域福祉計画を策定
- 障害者、児童に係る計画が未策定の場合には、地域福祉計画の策定に併せて策定を期待
- 法定計画との関係
- 地域福祉計画と策定済みの他の法定計画の対象分野とが重なる場合、既定の法定計画の全部又は一部をもって地域福祉計画の一部とみなすことができることとし、既存計画を優先することが適当
5.都道府県地域福祉支援計画
(1)支援計画に盛り込むべき事項
(1) 市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項
- 市町村や市町村が実施する広域事業に対する支援
- 福祉サービスに関する情報の収集及び提供システムの構築
(2) 社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項
- 人材の確保や福祉従事者に対する研修体制の整備等
(3) 福祉サービスの適切な利用の促進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項
- 市町村が実施する福祉サービスの相談支援体制及び供給基盤整備の促進等
社会福祉法人、非営利組織、民間事業者等への経営指導方策
サービスの評価等の実施方策
広域的事業及び専門性が高い事業の情報提供及び相談体制の確保
地域福祉権利擁護事業、苦情解決制度等の実施体制の確保
(4) その他
(2)支援計画の基本姿勢
支援計画は、市町村の自主的な地域福祉計画の達成を支援するためのもの
(3)支援計画策定の体制と過程
(1) 都道府県行政内部の計画策定体制
関連計画や生活関連分野との連携を確保するため、関係部局が一堂に会した検討会の開催や部局を横断したプロジェクトチームの立ち上げも有効
(2) 地域福祉支援計画策定委員会
地域住民、学識経験者、福祉・保健・医療関係者、都道府県職員等が参加する地域福祉支援計画策定委員会を設置
策定委員会は原則として公開とし、進捗状況を適宜公表するなどの配慮が必要
(3) 支援計画策定方針の決定等
- 平成14年度のできるだけ早期に地域福祉計画策定ガイドラインを含む策定方針を決定することが適当
- 地域福祉計画策定に向けた気運の醸成が必要
平成14年度中は、住民等による問題関心の共有化・助走期間と位置づけ、支援計画は、市町村の地域福祉計画策定状況を踏まえつつ策定することが適当
(4) 都道府県社会福祉協議会及び共同募金会等の役割
社会福祉協議会等は、支援計画の策定に参加するほか、都道府県が市町村の地域福祉推進を支援する上で、大きな役割を果たすことを期待
(5) 地域福祉圏域の設定
(6) 計画期間及び公表等
(7) 他の計画との関係
(照会先)
厚生労働省社会・援護局地域福祉課
末岡・佐藤(信)・東
03(3595)2615(直通)
社会保障審議会福祉部会名簿
(敬称略、五十音順) (平成14年1月28日)
氏名 役職 備考
茨木 尚子 明治学院大学 社会学部助教授
岩田 正美 日本女子大学 人間社会学部教授 部会長
大山 博 法政大学 現代福祉学部長
岡田 喜篤 川崎医療福祉大学 副学長
岡部 卓 東京都立大学 人文学部教授
北野 誠一 桃山学院大学 社会学部教授
京極 高宣 日本社会事業大学 学長 部会長代理
佐口 和郎 東京大学大学院 経済学研究科教授
鈴木 真理子 岩手県立大学 社会福祉学部専任講師
武川 正吾 東京大学大学院 人文社会系研究科助教授
中村 博彦 (福)健祥会 理事長
根本 嘉昭 立正大学 社会福祉学部教授
長谷川 匡俊 淑徳大学 学長
村田 幸子 ジャーナリスト