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第2次伊丹市障害者計画(素案)について

とりあえず、しぇあーどスタッフみなさん宛の「障害者計画(素案)」の解説書です。
素案全文は、こちらです。【第2次伊丹市障害者計画

掲載日:2005年9月28日(水)
文責:NPO法人地域生活を考えよーかい
李 国本 修慈


 とりあえず、出た、というか、できた障害者計画(素案)についての解説(というほど詳しいものでなく、国本の解る範囲の、おそらく偏ったりしている?モノ)です。

 まず、16ページまでは、市の概要や国と市の政策方針の説明ということで、すんなり通過。ふと、感じるのは、数値に関しても、例えば精神障害といわれる方々(医療を必要とする)の数値の推測がなかったり(そんなもんかしら?)でいいのかな?といったことなど。

 で、大切な基本方針が、これまでの「ノーマライゼーション」「リハビリテーション」「インテグレーション」に加え、「主体・自律」といった文言が入り、それによって、「共生」「参加」型の社会を創るとあります。ちなみに参加には「完全(参加)」という文言がついています(素晴らしいと思います)。

 そして、伊丹市の総合計画(行政計画の最高位)では「豊かな生活空間、人間性あふれる成熟社会をはぐくむ市民自治のまち」を将来像としてあげています⇒ここらも市民としては知っておくことが必要かと思います。

 18ページでは、それぞれの方針(理念)の説明が入り、新たな方針(主体性・自律性)についての説明に「自身の自己決定や社会的責任を高めよう」という文言があり、こういった言葉の真の意味の確認が必要であると感じました。

 しかし、新たな方針「自分らしく、生きることのできる共生社会の実現」には、ぜひ具体的な対策を持って実現していきたいと感じる文言です。

 19ページには、基本目標として、1〜5までが挙げられているのですが、なかなか理想的な内容ですが、むむむ、とうなってしまう言葉が並んでいます。

 そして、19ページの末行には、新たな目標として、「しょうがいのある人の主体性や自己決定が尊重され、しょうがいのある人が地域の一員として自らの意思により自らが決める生活ができるよう、自由と権利が保障される市民自治を目指すもの」とあり、ぜひ、この理念が広く市民に浸透・認識されることを望むものです。

 20ページには、少し具体的な文言で、「計画をつくるときに心がけること」が記載され、素晴らしい内容となっています。

 特にBの権利擁護の考え方については、この2次計画にて、「しょうがいのある人の自己決定や権利擁護を支援する施策を構築する」とあり、大いに期待(していいのかしら?という気持ちもあるのですが)したいと思います。

 と、Dにかかげられた民間活力の導入についても(あえて「も」という文字を使うのですが)、充分に注意(そのあり方に)が必要な視点であることも頭にいれておくことが必要かと思います。

 そして、21ページには、重点課題として、三項目に渡っての記載があるのですが、AやBにみられる、「しょうがいのある人が持てる能力を最大限に生かしながら」という文言や、「利用するサービスの量に応じた公平な費用負担」という文言については、しっかりとその中身(内容)を確認する必要があるように思います。

 このあたりの文言は、障害者基本法で、削除された文言「自律への努力(旧第6条)」の復活的ニュアンスが感じ取られ(自立支援法案のそれと同様で)、危惧するところであるかと思います。

 22ページからは、重点課題についての具体的な内容が記載されています。

 ここいらは重要ところで、みなさんにもしっかりと読み込んでほしいところです。

 特に、23ページにある、(2)地域生活を基本とした施策に書かれている「必要なサービス量を確保するためにサービスの種類ごとにそれぞれのサービス水準や目標量を設定し、一定期間を定めながら計画的に整備します」とあり、これが、正に「障害者プラン=数値目標」となって具体化されていくのかも確認が必要であると思います。

 しかし、この文言を記載したからには、頑張っていただきたい(と思いながら、いつもへこまされるのですが…)と思います。

 気になる点として、○障害等の理解の促進にある、啓発活動など、とっても大切だと考えるのですが、このあたりにきっちりとした予算などがつくのかな?(というか、文言倒れになるのが見えてくる=私的感想)といった印象です。

 更には、○権利擁護推進の項目に見られる文章として、これまであるにはあったが、なかなか進まない(といった認識、ある程度の進みはあるが、その実態は掴んでいません⇒私)「成年後見制度」や「利用援助事業」は、「より効率よく稼動するようにする」としているのですが、続いて記載されている「ケアサポートの仕組み」については導入の検討に留まっているようです。

 しえあーどスタッフみなさんには、記載されているADA法やICFについての理解も進めていただきたいと思います。

 23ページ下段からは、2.「生きる力」の支援という項目で、地域生活支援に係わる内容が記載されています。

 内容は、よく目にする文言が羅列されていますが、例えば(2)自立生活の支援の項目に書かれている「本人主体のサービス提供を行うために多様なサービスが柔軟かつ複合して利用できるよう、個別給付等を基本としたサービスの再編を行う」とあり、とっても大切な文言で、この言葉を大切にしていただきたい(今の伊丹市、大いに逆行してしまっている…という印象なんで…)と思います。

 26ページからは、3.安定した制度の運営という項目があるのですが、おおよそどこかの国の新法(案…現時点では)のなぞり書きのようなんですが、出だしにあるような財源不足が起こり得たシステムに対する対策や、今、正に議論となっている「応益負担(という言葉をそのまま使うのは、はっきりしてていいのかと思いますが…)」についても、もう少し深い議論に記載文章が必要ではないかと思います。

 また、(2)に記載のある「障害程度区分による客観的な基準」のみによって支給決定される仕組みを公平な配分とする思考についても、もう少し(いやいや大分)議論が必要ではないかと考えます。

 28ページからは、第4章として、施策の基本的方向性(分野別施策)が記載されており、その体系などは、全国的標準指針的なモノとなっていますが、その内容などは、A検討すべき課題に挙げられている通りだと感じるのですが、実態として、その後に記載されている体制が構築できるのか?といった視点に立つと、実際に多岐にわたる相談を受けている経験等からも不可能に近いと言わざるを得ないと感じます。

 そして39ページからは、U.地域で共に生活するためにという項目で、順次細目を挙げられています。

 その1.保健・医療サービスについても、素晴らしい文言が並んでいるのですが、具体的プランとして設計できるのか、大いに不安になる内容です。

 と、気になる文言として、「障害を軽減させる」「障害の軽減をはかるため」等があるのですが、こういった言葉からも、生活視点というよりも、医療モデル的な発想に感じるのですが、如何なものでしょうか?。

 また、42ページ下段からは、(3)医療的ケアに対する支援という項があり、正に我々の行ってきているコトに関する事項なんですが(その実体資料は事業団さんのみによるもの…でずっこけてしまうのですが…)、B実施計画、ウにも挙げられているコトをしっかりと議論しながら行うことが早急に望まれるのですが…。

 更に、「デイサービス等の通所施設への看護師派遣を検討する」ともあります。

 46ページ下段からの記載にある(6)保健・医療サービス提供体制における記載事項は重要で、前計画の反省からはじまり、医療と福祉の連携がうたわれていますが、どのように実行していくのかは、やはり危うい(進まない・進みにくい)モノだと感じざるを得ません。

 そういった意味では同様に、三障害一元化などといわれる中での、47ページから始まる、2.精神保健福祉に関する施策においても、障害福祉と保健所との連携から始まる体系作りが必要であるように感じます。

 2.障害のある子どもの療育体制においても、追求されるべき理念がある一方、なかなか、実態とそぐわないデータ(公的及び半公的事業による)によって語られていることには危惧するのですが、そういった意味からも、正に民間、草の根的な活動実態の積極的な把握とデータ収集も必要ではないかと痛切します。

 と、注目(以前からですが)の「重症心身障害児(者)通園事業」の整備も、「広域で研究」するとあります。しかし、そういっ実感がどれだけあるか(ないような実感ですが…)、なかなか計画(理念)と実態の乖離はあるようです。

 55ページからの、(3)生活支援・家族支援では、在宅サービスの柱としてのホームヘルプや短期入所・緊急一時保護者家庭制度についての記載があり、ニーズの量に対応しきれない実情も把握している中での考察となっています。

 児童くらぶやファミリーサポートセンター等の社会資源もあげられています。

 おもしろい記載としては、57ページのB実施計画のウにある「短期入所・緊急一時保護者制度の充実」の項目において、「支援費事業者等による短期入所事業所の設置促進」を上げています。 

 更に、同計画オでは、「タイムケア事業を継続していく」といった記載があり、今後、充分な検討が必要であると思います。

 58ページからは、4.在宅生活に関する支援サービスとして、その類型ごとに記載があります。

 おおよそ、自立支援法案にそった内容となるので、現状での指摘も難しいのですが、計画に対してプラン(数値目標)を立てる際に、例えば64ページのB実施計画イ.にあるような重症心身障害者短期入所の確保なんてのは本当に可能なのでしょうか?。

 また、68ページにある、エ.養護学校卒業生の受け入れ先の確保として、「小規模作業所に協力依頼するなど受け入れ支援の強化を図ります」とあるが、重度重複障害児の進路先として、かなり無理のある計画であるように感じます。

 また、68ページからの、(2)デイサービスでの項目での、B実施計画においては、「多様なデイサービス事業を提供していくため、多様な支援事業者によるデイサービスの実施を促進します」とあるのですが、まさに、言うは易しの文言で注意が必要かと思います。

 71ページからは、6.住まいの確保に関する福祉サービスとして、入所施設やケア・ホーム、通勤寮や、グループホームについてが記載されていますが、自立支援法案の内容によって、そのプランも大きく変わろうかといった計画であるかと思います。

 特に入所施設に関しては、「地域移行型」や「地域支援のバックアップ機能」としているのですが、その過程から行方まで、きっちりとした議論と検証は必要であるかと思います。

 91ページからは、4.移送の支援という項目で、A検討すべき課題、B実施計画(共に92ページから)で、有償移送サービスの拡充への方針が出されています。

 以上、簡単な解説というか、読んで気になった点の羅列なんですが、この素案の最終章=第5章推進体制の整備に描かれた文言が、実際に行われていくことを強く望むところです。

 我々、重度心身障害児・者といわれる方々の支援活動を通して見えてくるものは、しょうがいというカテゴリーが、ひとくくりになってしまう危惧さがあり、そのカテゴリーの中にも多彩な違いか存在していることなどが、行政はじめ、関係者や市民の一般的認識となるようにと思います。

 多くの計画が、そのものにも書かれているように「自立支援法案」が明らかになった時点でないと詳細は詰められないということであると思います。

 ただ、伊丹市に望みたいのは、上記にも示しました最終章に繋がる理念追求の姿勢は見せていただきたいということ。

 今後、ますます市の位置づけが重要視されていく中、伊丹市発の施策や理念が、もっと明確に打ちだされてもいいのではないかと感じました。

 なにかと唖然とする機会の多い伊丹市の福祉行政が、掲げる通りの協働・参画の施策作りとして、全ての市民から認知されることを強く期待するところです。


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