地域生活を考えよーかい

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短期入所における(制度設計)の怪(あるいは不可解)

掲載日:2009年6月13日(土)
報告者:特定非営利活動法人地域生活を考えよーかい

 なんとも怪しげなタイトルですが、やはり怪しい、不可解なそれ、短期入所(の制度設計)です。
 短期入所に関しての説明をここでは省きますが、その必要性(あるいは重要性)については、まさしく今回のフォーラムのテーマである「誰もが暮らせる地域づくり」を考える際には不可欠(短期入所が不可欠という意味ではなく、宿泊としての機能がという意味)であることは、多くの方が、充分に認識していらっしゃることかと思います。
 短期入所については、これまでにもいろんな議論があったと思うのですが、制度として、それを形成していく過程で、なんだかずるずると不可解(というか、実態と乖離した)な方向へ進んでいるように見えてしまいます。
 そもそも短期入所における事業単価(報酬単価)の問題は、かねてからあり、例えば、昨年度(3月末)までの報酬単価を見ると、障害者施設(福祉)、あるいは単独型の短期入所事業所と医療施設(療養介護施設等)での報酬単価差額は、驚けるものがあります。
 我々(しぇあーど)のような、単独型事業所など(障害者施設も同様)の1日あたりの単価が890単位(1単位を10円と換算しますので、1日あたり8900円ということになります。また、実際には、地域加算等で、これより若干の加算があります)。
 それに対して、医療型(前述の療養介護施設など)の事業所ですと、1日あたりの単価が2400単位となります。
 この差額だけでも充分に驚けるのですが、片や「医療機関だから」と言われれば、それでなんとも反論できないものなのだろうか?と、これまでにも思ってきたものです。
 「医療機関だから」こそ、できる訳で報酬額が高い、とすれば、それと同等の(同じのという言い方でよい)方々の利用を受け入れる事業所への単価が低いということは、なかなか納得できるものではない訳です(同一人物が選ぶ先によって介護給付費=報酬単価額が違うという矛盾)。
 ましてや、双方を比べて選ばれて、あるいは、片方(医療型施設)に拒否されての利用であったりとしても、そのような状況なのです。
 ようするに、この報酬単価設定における不可解さは、その1日あたりの報酬額が、入所施設型(施設内のベット利用)と通所施設に併設型(及び単独型)の報酬額も同様、というよりも、基本的に入所施設での短期入所のイメージを全てに適用しているという点であると思えます(このあたりの別立ての考えの無さ、あるいは入所施設内での短期入所の在り方の問題意識の無さこそが大きな問題であると思えます。但し、ここで私が言うような施設ばかりではありません。むしろ、このあたり⇒なんとかやりくりしている施設・事業所と、なかなかそうは言い切れない施設の双方が存在することも、イメージされにくい要因なのかも知れません)。
 では、入所施設内短期入所と通所施設併設型短期入所(単独型も含む)では、何が違うのか?と言うと、多くの入所施設では、短期入所利用があるからといってのスタッフ増はありません(中には、短期入所専門のスタッフ配置を行っている施設もあるにはあるのですが、それでも、入所施設と一体となった運営を行っているわけです。)。
 逆に、通所施設等の併設型、あるいは単独型短期入所事業所では、例え、一人のみの利用者(定員が3~4名であったとしての)であっても、そこには少なくとも1人(以上)のスタッフを配置しなくてはいけない訳です。
 と考えると、その890単位という数字で、併設型あるいは単独型の短期入所事業をやっていけるのでしょうか?、あるいは今後、必要な社会資源として、拡がりを持たせることができるのでしょうか?。
 こういったお話しをすると反論として出てくるのが、「それは営業努力として、定員数をしっかり確保すれば解消できる問題」などという言葉です。
 確かに、例えば、しぇあーどですと、定員4名ですので、定員いっぱいの利用者を常に確保していれば、890単位×4人=3560単位(35600円)ということで、なるほど、見合うではないかということになりそうですが、さて、重症心身障害といわれる方々等4名をたった一人で介助(支援)できるものなのか?と考えただけで、答えは明らかな筈なのですが…、現状は、そうなのです。
 もう少し、その不可解さを明らかにしていくと、上記の単価(890単位)というのは、障害程度区分6である方の場合で、程度区分が下がれば下がるほど、介護給付費(報酬単価)も下がるという仕組みです(これ自体も、なんとなく納得してしまいそうなんですが、障害の程度がどうであれ、対人サービスを行うには、どの方に対しても「人」が必要だということ=特に単独型に関しては、間違いなく言えることで、そういったことも認識してもらいたい部分です)。
 以下、それぞれの程度区分における報酬単価です。
 程度区分5=757単位、程度区分4=624単位、程度区分3=562単位、程度区分2及び1=490単位、となっています(障害児は区分が3段階で、区分3=757単位、区分2=593単位、区分1=490単位)。
 こういった報酬単価、本当に問題である訳で、私どもしぇあーどのような単独型にとっては、かなり厳しいものです。
 さて、「短期入所の怪」としたのは、このことのみではなく、むしろ今年度に改訂となった報酬単価の在り方についてです。
 今年度、短期入所事業における報酬単価の変更については、私たちのような単独型短期入所への加算だとか、重度障害者支援加算等(その他、日中区分ができたことにより、医療型施設で、これまでなかかな利用サービスが無かった重症児・者といわれる方々の日中ステイ先が出来たり等)があり、それは評価できるものだったのですが、問題となってしまうのが、正に、今回の改訂報酬単価設定に「福祉型短期入所サービス費(U)および(W)(日中活動を利用されている方に適応する単価設定)」が新設されたことです(別紙として参考資料あり)。
 この単価設定が新設された背景には、これまで同一法人でサービス提供される「日中活動」と「短期入所」の双方のサービスを提供した場合、介護給付費の二重取りではないかとの考えがあったこと、それを解消する為に、日中活動と短期入所の両サービスを提供できるようにとの考え(明確化)があってのことだったのでしょうが、このことが、併設型、あるいは単独型短期入所事業所には大きな打撃を与えることとなりました。
 と言うのは、これまで、上記のサービス費がなかたっ際(09年03月まで)には、例えば、しぇあーどのケースで言いますと、短期入所を利用される方々は、概ね、夕刻から利用されるということで、その時間帯から(翌日まで)の利用として、上記の890単位(泊を伴うので1泊2日で1780単位=17800円)という報酬額が得られた訳ですが、この4月からは、これも上記に記した通りの新たなサービス費(日中活動を利用されている方に適応)が設定された為、ほぼ全ての利用者さんの介護給付費(報酬単価)が、減額となってしまいました(別紙として資料あり)。
 その減額された報酬単価は以下の通りです。
 程度区分6=890単位⇒581単位(35%減)、区分5=757単位⇒509単位(33%減)、区分4=624単位⇒307単位(51%減)、区分3=562単位⇒231単位(59%減)、区分2及び1=490単位⇒166単位(77%減)(障害児は、区分3=757単位⇒509単位、区分2=593、単位⇒209単位、区分1=490単位⇒166単位)となっています。
 この額を見れば、おわかりでしょうが、途方も無い変化(後退)です。
 そして、制度設計された方々は「加算分があるではないか」とおそらく仰るんでしょうが、加算分(重度障害者支援・単独型・短期利用の各加算)を含んでも(別紙として資料あり)、最大(最小の下げ幅)の改訂単価の割合が88%(12%減)ということになってしまいます。
 繰り返しですが、今回の報酬単価の改訂で評価できる部分もあるのですが、上記のことを鑑みると、やはり現場・現状(実状)を理解できていないと言えるうに思います(おそらく制度設計者の立場からは、それを否定されるのでしょうが…。様々な意見を反映した結果がこれだと言われたり⇒確かに、「日中」部分とそれ以外の区分けは必要であるかと思いますが…)。
 短期入所の報酬改訂を見た際、何点かの加算の目的は、声として上がっていた「重度障害者」といわれる方々の受け入れだとか、我々のような単独型事業所等への配慮、布いては、不足する社会資源を創出(増やす)のが目的であったと思うのですが、現状は、この通りです。
 なかなか、単独型短期入所(やその他の福祉型短期入所事業所)において、「重症心身障害」といわれる方々、ましてや「医療的ケア」を要する方々を受け入れるといったイメージは無いのかも知れませんが、そういうことも行っている事業者(法人)もあるんだ(少なくともこの地域には、『ぷりぱ』や『しぇあーど』といった事業所がある)ということも、しっかり伝えていかねばならないようです。
 こういったことを伝えていくことこそが、社会資源の創出、地域力の向上に繋がるのではないかと思うのですが、なかなかこれも、伝え手と受け手の感覚の違い(温度差)によるものなのか、なかなかうまくいかないのが現状です。
 そう考えながら思える何より不可解なのは、もう10年も前から感じる「より大変とされる方々の暮らしを支える為の思い」とでも言うものが、なかなか感じにくい制度設計です。
 仮に、前年度までの890単位(8900円)だったとしても、それで、人一人の、一時的であろうと、その「暮らし」は支えきれないように思います。
 せんだって訪れた横須賀市では(別紙:誰もが暮らせる地域づくり見聞録ゆう参照)、通所施設併設型短期入所事業所に対して、上記の差額(医療型施設と福祉施設の報酬単価の)を補填した上で、短期入所事業の稼動時間を17時~翌朝9時までと考え、それ以降の時間帯に、日中活動サービスを利用できない際には、その時間に対しての「人的保証」(人件費相当額)も補填し、更に、ホテルコストの観点から「空床保証」も行い、地域の社会資源として成り立たせています。
 そんな風に、行政と事業者が、より具体的に支援可能な状況を作り出している地域も在る訳です。
 そんな実際をしっかり示し、「誰もが暮らせる…」に繋げたいと思います。
 と、決して、そんな「人的保証」等は、障害が重いとされる方々のみではないということ、誰にも必要なんだということも記しておきたいと思います(古くから続く、ハコモノでの収容管理型の考えは、どうにか払拭したいものです)。
 そして、我々支援者などという(ならば)者は、それでも、なんとか、どうにかしてやって行こうという思いは、持ち続けたいものです。
 こんな一例も、ぜひ、今回参加いただいた皆さんには、お考え頂きたいと思います。

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