地域生活を考えよーかい

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誰もが暮らせる地域づくり見聞録 横浜市と川崎市を巡る 2009/12/1〜2

掲載日:2009年12月18日(金)
報告者:特定非営利活動法人地域生活を考えよーかい

12月5日の「誰もが暮らせる地域づくりフォーラム」最終回を間近に控えた師走突入の1日の12:45に謎の研究者:蜂谷俊隆さんと新大阪で落ち合い、横浜へと向かいました。
この最終回のフォーラム、私自身の諸々の事情もあったりで、かなり準備が遅れる中、蜂谷俊隆さんに、その多くを請け負っていただきました。
が、どうしてもフォーラムでお会いする方々とは事前にお会いしておきたいという性分(とにかく人見知りが未だに激しく、初対面が途方もなく苦手でして)で、なんとか予定をこじ開けつつ、更に無理からに蜂谷さんにも同行いただき、せっかくだからということで、前3日間で数箇所の訪問予定を組んでみました。
新幹線の中では、ゆっくり弁当を食べながら、週末に迫ったフォーラムの打ち合わせ(というほどのものではなかったのですが)をしているうちに富士山のてっぺんを眺めつつ、あっという間に新横浜に到着しました。
新横浜からは、レンタカーに乗って、まずは「朋」さんへ。
前日の無茶苦茶なお願いにもかかわらず、生田目施設長さん及びスタッフの方から、今回はケアホームについての取り組みをお聞かせいただきました。
この点については、多くの方がご存知の通りの「朋」さんの取り組みで、更に横浜市という「恵まれた」(朋のスタッフさんも仰っていました)システム(と言っても、これもやはり積み上げてきたが故のカタチのようです)もあって、なんともサラリと行なっているといった印象ですが、その(ケアホームの)数が9つで、その中での取り組みも、ご本人さんを中心としたカタチをとって行われているようです(当たり前なんですが)。
そしてきっちりとした生活設計をたてているといった印象でした。
【生活費の例】

障害者年金・特別障害者手当て・住宅手当・生活保護費で総額約25万円/月の収入支出は家賃(4〜5万)、食費・水光熱費(約4万)、管理費・通信費・消耗品費(2万5千円)、協力費(3万円)、介助料費(7万円)の合計約21万円前後/月

そして、横浜には在る羨ましい補助(家賃補助1/2:上限175000円?だったかな?など)にも改めて驚けるものでした。
私自身は2度目の「朋」さんへの訪問でしたが、夕刻の時間帯だったこともあり、ご本人さんにお会いすることはできませんでしたが、施設長はじめ、スタッフみなさんから、なんともいえない雰囲気(誇り?・希望?・自信?のような)を感じました。
そして、次ぎは川崎へ。高速道路を走り「NPO法人療育ネットワーク川崎」の「サポートセンターロンド」さんへお邪魔しました。
こちらは私がこういった活動を始めた頃に訪れさせていただいた場所で、代表の谷みどりさんに川崎市や周辺の事情をお聞きしました。
その中で驚いたのは、短期入所事業がNPO法人では事業指定を受けられないといったことでした。
その他、すぐに、隣の横浜市と比べてしまうのですが、いろいろな点での福祉施策の停滞がみられるようです(前回うかがった際は、支援費制度施行前ながら、ホームヘルプ事業が行われている画期的な都市というイメージだったのですが…)。
そんな中、「ロンド」では、年間事業費1億6千万という実績を積まれているということで、改めて、その奮闘振りに元気をいただくものでした。
更に、そんな中、これからケアホームを設立していこうという若手スタッフが、周辺を巻き込みながら検討を重ねている場面にも同席させていただき、こんな活動がしっかりと事業と成り、地域に芽生えていくようにと思えてなりませんでした。にしても、がんばってほしいなぁと思います。
その後、遅くまで、谷さんの熱い思いを聞きながら、草の根的な活動から続く力強さを感じ元気をいただけました。
翌朝2日は、今回のフォーラムでご講演いただく中畝さん宅へ向かうべく、再度横浜まで電車で移動。
横浜市北部の住宅街の駅で中畝ご夫妻とお会いしました。
まずは常雄さん、あたりまえですが、「ひげのおばさん子育て日記」の中の「ひげのおばさん」にそっくりでした。
治子さんは、そのはっきりとした口調(文中での)から、とっても力感溢れる方かも?と想像していたのですが、小柄でとっても柔らかな印象でした。
そして、まず、お近くにあります「社会福祉法人キャマラード」さんが運営するケアホーム「スマイルホーム壱番館(女性館)」をご案内いただきました。
静かな住宅街にあるケアホームで、室内の広さや陽の当たり具合など、申し分の無い作りでした。
また建物についても地元の理解ある地主さんが好条件で土地及び新築物件(もちろん使い勝手を考慮した設計です)を貸していただけるというカタチで、更に横浜の家賃補助もある中で、ご本人さんたちの住まいとして成り立っているようでした。
【生活費の内訳】

収入 障害者基礎年金(82500円)、在宅障害者手当て(10000円)、特別障害者手当て(26440円)の合計118940円/月支出 家賃・水光熱費・共益費等(約60000円)、食費(15000円)、通所施設利用負担金(約17000円)、国民健康保険(1500円)、外出費用(10000円)の合計103750円

その後、中畝家へご案内いただいたのですが、急な坂道を登り終えたところにあるステキな雰囲気の「お家(おうち)」でした。
壁も自らで塗られたということで、玄関なども山小屋風、今も、なるほど(本の中の空間と合致)と思える生活感が漂った空間でした。
そこでしばしの談笑。美味しい中国茶をいただきながら、障害福祉のこと、社会構造のこと、子育て・教育のこと、など等、色んなお話しができました。
中畝さんご夫妻については「障害児もいるよ ひげのおばさん子育て日記」(フェミックス刊)をご覧(お読み)いただくと、そのなんともいえない快さを感じられるかと思います。
その後、再び社会福祉法人キャラマードさんが運営する「みどりの家」を見学させていただきました。
その沿革は、小さな作業所から、横浜市北部に重症心身障害児・者の通所施設を作る会へ発展、そして社会福祉法人へと進化をしてきたということです。
広い敷地にきれいな建物で、生活介護(40人定員)とB型通園事業(定員5名)を行なっており、重症心身障害といわれる方々及び医療的ケアを要する方々もしっかりと利用対象者としてがんばっておられました。
また施設内に「診療所」が併設されており、とっても誠実なお人柄の三宅捷太医師が、通所者みなさんと午後からは外来診療もされていました。
ほんとに医師や看護師が常駐するといった「日中活動場所」がもっと増えればと思いました(横浜市には「朋」を含め3ヶ所の診療所を併設した生活介護事業所があるということです)。
また短期入所事業(定員4名:利用は通所されているみなさんにとっての体験的宿泊に利用されているようでした)も行なっており、自らの施設へ通所する方々の「それ以外の時間帯」に対する支援にも力を入れていることが伺えました。現在2ヶ所のケアホームに加え、更にもう1ヶ所のケアホームを建設予定ということでした。
ケアホームで生活している方の介護給付等利用(受給)内容

介護給付 共同生活介護 31日/月 重度訪問介護247時間/月(移動加算60時間)地域生活支援事業/地域活動支援センター(デイ型)23日/月 移動介護96時間(二人介護)

その後、中畝さん宅で「ひげのおばさんの手料理」をいただき(大変な美味しさでした!)、本に出てくる「友雄くん」ともいろんなお話しをした後、急ぎ渋谷へと向かいました。
渋谷では、12/5のフォーラムでお世話になります青山女子短期大学の杉田穏子さんに面会いただき、フォーラムの打ち合わせとともに、これまでに彼女が行なってきた研究などについてお伺いしました。
北欧等の福祉事情にも詳しく、何より様々な社会構造に対しての思いの深さのあるステキな研究者といったイメージでした(ほんとにステキな方で、今後もお付き合いいただきたい方です)。
そして、今回最後に訪れさせていただいたのが「レスパイケアサービス萌」さん。
もう数年にわたり、「訪問看護」と「居宅介護」を合わせたサービス展開をされている事業所さんです。
 もちろん重症心身障害児といわれる方々への支援や医療的ケアを要する方々にもサービス提供を行っています。
 何よりステキだなと思えたのが、設立時の代表者田中千鶴子さんの言葉「私でよかったら、1日お留守番しましょうか。吸引や注入ならできますよ」から始まったということ。
田中さんご自身にも障害児といわれるお子さんがいらっしゃり、病院外来で知り合われた方に対して、そんな言葉からボランティア活動として、看護師が「できる範囲」でのお手伝いを始めたのがきっかけということでした。
このあたり、まさに私なんぞが思う「地域での(病院ではない)暮らしを支える為」に最も必要な部分(できる者ができる範囲でお手伝いするという)ではないのかな?と感じました(もちろんこれのみではいけないのですが)。
とにかくその理念というか、あるべき専門職といわれる(いわれなくても)人の姿勢のようなものを改めて感じさせていただいた思いでした。
その田中さんの言葉で「公的サービスが充実し、萌ももう解散ね!という日が1日も早く来ることを願ってやみません」というのがあり、まさしく今の私なんかも同感なんですが、現実的には、そうは行かずで、悩ましいながらも、それでも何時かはそんな社会の実現へと、今を考えて行ければと思いました。
あっという間に日も暮れて、急ぎの行程でしたが、様々なモノを得ることができたように思います。
既に確固たる「カタチ」を形成した中、更に「新たな動き」を模索しながら活動を進める「訪問の家」のみなさん、それに続けとばかりに同市北部で活動を展開する「キャラマード」のみなさん、方や横浜市の隣にありながら様々な制度が整わない中で奮闘する「療育ネットワーク・ロンド」のみなさんは、それでも向き合う方々と自らの思いの実現の為に実践を積み上げていこうとされており、その姿勢にはほんとに元気をいただきました。
また、「萌」さんでは、なかなか整わない社会資源と社会構造の中で、おそらくとても必要であると思われる「できるかぎりでできることを」という理念がとても心に染み入りました。
例えば専門職といわれる看護職を例にとってみても、「指示書が無いとできない(これも医療的モデルの典型かな?と思ったりします)」といった実状よりも、「吸引と注入だけなら出来ますよ(型にはまった指示書などなくとも)」といった「自らの心の指示書」をもっともっと示すことの出来る「私」が増えてほしいものだと感じました。
そんなことが専門職という「職域」を崩すといったご指摘があるのかも知れませんが、そんなシステムが無い中でこそ、そんな「心の指示書」を示す人がもっともっと現れてほしいと繰り返し願います。
もちろん、そういった中から、出来る限り普遍的なシステムを生み出していこうという流れにも賛同するものです。しかし、地域格差等がある中、各地の先進的な(積み上げてきた)実践を見る度に、やはり「個別実践の実体化」こそが普遍性へと?がるように感じました。そんな流れを作っていける一助に少しでも役立てればと思います。
今回、お伺いさせて頂きましたみなさんへ、この場をお借りして御礼申し上げます。

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