地域生活を考えよーかい

地域生活を考えよーかい

2013年度認定看護師教育課程訪問看護コースでのお話し内容

2013年度認定看護師教育課程訪問看護コースでのお話し内容です。

掲載日:2013年7月5日(金)

mailto:kunimoto@kangae-yo.com

2013 年度認定看護師教育課程訪問看護コース
専門基礎科目 在宅医療病態論「小児訪問看護」を受講されるみなさまへ

2013年7月26日(金)
NPO法人地域生活を考えよーかい 有限会社しぇあーど 李 国本 修慈

 はじめまして。私は兵庫県伊丹市で、上記の2つの法人により「地域生活支援」というような活動及び事業を行っています。もしかしたら馴染みの無い言葉であったりするのかも知れませんが、誰もが暮らしやすい地域になりますようにということで、丁度、介護保険制度が始まった年(2000年)に尼崎市で「1時間1,000円でなんでもします」という活動を開始したことが始まりです。当時は社会福祉基礎構造改革という流れが大きく動き出した頃でしたが、「障害児・者」といわれる方々の「生き辛さ(生き難さ)」はなかなか顕在化されておらず、私たちが始めた活動に寄せられる需要が、2年ほどの間で300人近くになったことを思い出します。
 今回、私たちが行ってきた活動及び事業内容をみなさんにお話しさせていただきながら、「医療ニーズに応えるための看護」であるとか「重症心身障害をもつ児や家族への看護支援の方向性」(いずれも今回の講義による<ねらい>からの抜粋)を考えてみたいと思います。キーワードは「ニーズ」と「方向性」でしょうか?。その中から、本当に大切なコトを考えてみたいものです。
 みなさんは看護師という資格をお持ちでしょうから、間違いなく「看護」、もう少し広い意味で言うと「医療」のプロといえるのかと思います。只、私がこういった活動を続けてきた10数年で感じることは、必ずしも専門的な医療職者が、地域で暮らす、あるいは暮らそうとする方々(障害当事者といわれる方々や、ご家族みなさん)にとって有用なことばかりではなく、むしろ医療モデル的な考えを地域やご家庭(自宅等)に持ち込んでしまうことによる弊害さえもあることを考えたいものです。それでも間違いなく必要である「医療」や「看護」について、それをもって人として関わることの意味だとか、何よりも「ご本人」(当事者)の望む暮らしに添える感性を身につけたいものです。なんだか偉そうな言い回しで申し訳ないのですが宜しくお願いいたします。
 今回の講義の「ねらい」や「内容」(いただいた確認書から)によると、「看護の視点による児や家族の見方」や「介入と成果」「看護実践の評価」、「チーム医療における課題」や「看護師の役割」という文言があり、それらの言葉を意識しつつ、みなさんと共に考えていきたいものです。
 私が「看護」というものに関心を持ったのは、決して「誰かを看護したい」というような思いからではなく、とっても解らない出来事(例えば幻覚や幻聴といわれることなど)が何故起こる(在る)のかを知りたかったということがあるのですが、そんな目的で入った医療(あるいは看護)という現場、私の場合は、重症心身障害児(者)施設(児童福祉法による入居(入所)施設であり医療機関)と精神科病院であったのですが、そこでの暮らしを「入所生活」だとか「入院生活」として語られた際に、私はどうしても「生活」とは思い難く、少なくとも私自身がその場での「暮らし(生活)」を延々と強いられるとするならば「No」と言う、あるいは言いたいと思ったものです。
 その後、病院や施設での「生活」といわれる場所から出て暮らす方々(自立障害者等といわれていました)との出会いや、重度障害者といわれる方々の多くが「分離・措置」された場所ではなく、ご自宅で暮らしている場面に接し、先に記した活動を開始することになりました。
 そして、制度が始まり、障害者施策に関しては制度名が二転三転する中、高齢者・障害者といわれる方々が、「地域で暮らす」(地域移行などという文言も盛んに使われてきました)という方向性の元、社会資源も増え、社会保障システムも整えられてきたといえるのでしょうが、それでも(未だに)、10数年前と同じように(変わらず)「生き辛さ」を訴える方々はいらっしゃり、重症心身障害だとか超重症児といわれる方々及びそのご家族みなさんも、そういわれる方々であったりします。
 私たち(あえて今回は看護師、あるいは医療職として)は今、これまでの経過をしっかり顧みつつ、大切なことを考え続けたいものです。この国の施策として行われてきた「収容保護」(入所施設や就学猶予など)や「更正自立」(訓練・授産施設というような)といった考えを如何に払拭していけるのか?ということも、そのひとつのように思います。
 現在、私は厚生労働省科学研究障害者対策総合研究前田班(主任研究者/前田浩利先生:あおぞら診療所)に参加させていただき在宅医療における医師・看護師・理学療法士・ヘルパーといった職種の育成プログラム作成を行っているのですが、そこに参加される医師・看護師といった医療職者の多くの方々が病院以外のこと(地域での生活支援の実際など)を知らなかった、あるいは気付いていなかったと言われます。もちろん地域で活動する私たちも病院内(あるいは施設内)のことを充分には知らずである訳ですが、そのこと(病院と地域は別物であるかのような思い込み)を強く意識していくことも言うまでもないのかも知れませんが改めて必要であると記しておきたいと思います。
 高齢化社会が進み、「多死社会」へ向かうといわれる現状の中、在宅医療が拡がり、NICUのベット数の不足があるとされる状況の中、小児在宅医療も少しずつ拡がりをみせている訳ですが、私たちはそういった「現状・状況」という背景に着目しつつも、本当に大切なこと=「高齢者といわれる方々も超重症児といわれる子どもたちも、【誰もが何処で誰と暮らしたい】のか」ということを根本に置いて「病院あるいは施設と地域(お家)」の関係(つながり)を考えたいものです。
 そしてもうひとつ、とっても聞き辛い(私としては言い辛い)ことかも知れませんが、現在私は、公益財団法人在宅医療助成勇美財団さんからの助成を受け、昨年の8月から1年間かけて各地を訪問させていただき、多くの「超重症児・者」といわれるご本人さんとご家族からお話しを伺う機会を得ました。各地にはとってもステキな支援者たちと共に活き活きとした暮らしを実現している方々がいらっしゃるのですが、そういったみなさんとお話していく中で、多くの方々が出生後や入院中、あるいは退院の際等に「医療に傷つけられた」と言われました。もちろんそのことは、関わる人が圧倒的に医療職者が多いということの結果であって、同じこと(傷つけられたという対象)が「福祉・教育・行政」等にも言えるのですが、濃密に医療に依存せねばならない方々の苦痛・苦悩に、医療職者といわれる少なくない方々が、あまりにも共感できていないことを実感しました。もちろんステキな医療職者もたくさんいらっしゃるのですが、です。それでも医療から逃れられない方々への視点ということを大切にしたいものです。
 また、医療からは「生き続けられない」といわれた、例えば18トリソミーや13トリソミーといわれるお子さんも、すくすくと成長している実際があります。医学的には呼吸すら出来ないとされる方々が、毎年恒例の活動を継続している実際があります。ある例ですが、重篤な状態となって入院した子どもさんの母親が、入院中の病院からSOSのメールを送られてきたりします。その内容は「次から次に来る人が、『いつ心臓が停まってもおかしくない。その際の手立ては無い』って言うんです」というものだったりです。次から次に来る人は医師である訳で、もちろん医師の発言は客観的な事実に基づくものなのでしょうが…というところに私たち医療職あるいは看護職という者たちはもっともっと敏感にならなければいけないのではないでしょうか。
 そして私たち「しぇあーど」における看護師(訪問看護ステーションを運営しています)の役割は「後ろ支え(うしろざさえ)」というところが最重要事であることも記しておきたいと思います。そのことは、例えば「医療的ケア」という文言並びに行為を支援者(医療職及び福祉職)によって捉えるのではなく、【ご本人さんにとっての文言・行為とする】ということであり、あたりまえに地域で暮らしていくという中において職者(職種)によって、あるいはケアによって『共に居る支援者』を決められるということではないということで、そうすると、おのずと最も近くに居る者(家族であったり、介護者・ヘルパーといわれる方々)が、例えば痰の吸引や径管栄養といった医療的ケアを行っていくというのは極自然な在り方であると考えていまして、その為(もちろんケアのみではなく知識・スキル、何より意識についても)の「後ろ支え」としての役割を看護師が担うということです。
 もちろん、このことは私どもの法人に依るものでありますので、そのことを強要するつもりは無いのですが、2012年4月から「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」により介護職者等にも医療的ケアの一部が法的に容認されることになりました。みなさんには、各地で進められている研修への積極的な協力をお願いしたいということと、それ(法制化)のみでは、ご本人さんが望むであろう地域での暮らしは支えられないということも認識していただきたいと願っています。
 そして「看護支援」の方向性ということについても、あたりまえに【ご本人さんによるニーズに基く】ということが基本であり、ここでも重要なのは、例えば「超重症」だとか「遷延性意識障害」といわれる方々(痛覚反射が無いだとかといわれてしまう方々等)の「ニーズ」(思い)をどう捉えるのかということ(ここでは記しませんが)であり、少なくとも「解らないことを無いこととしない」ということは確認したいものです。
 私たちは10数年、そういった方々と共に居ることで彼女・彼等から様々なコトを感じさせていただき、様々なモノをいただいてきたと実感しています。コミュニケーションをとることが難しい、あるいは解らないとされがちな彼女・彼等たちが、私たちの価値観をどれほどまでに変えてきたのか、例えば前述の各地への訪問の際に出会ったご家族や私たちが関わらせていただくご家族の多くの方々が同様に「自らの価値観を大きく変えられた」と言い、自らの幸福感を語られます。「看護支援の方向性」は、間違いなく在る「ご本人さんのニーズ」に添いながら、如何に彼女・彼等の存在の価値を明確化していくのかに尽きるのかと思います。そして、そのことは「看護」という領域のみにおけるものではなく、ご本人さんに関わるあらゆる者が持つべき方向性であるのかとも思います。その際に言われる「他職種連携」だとか「ネットワーク」の意味もじっくり考えていきたいものです。
 私のような者が偉そうに申し訳ありませんでした。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

 ^-^;;ご存知かも知れませんが、みなさんに知ってほしいことなどなど…^-^;;
☆小児訪問看護師の育成に必要な研修プログラム
〜小児訪問看護を普及するためには〜
NPO法人NEXTEP訪問看護ステーションステップ♪キッズ中本さおり
http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/data/file/data1_20110225023459.pdf

☆ほのさんのバラ色在宅生活http://honosan.exblog.jp/

☆医療的ケアが必要な乳幼児の個別支援計画に基づいたデイサービスの構築研究代表者豊田ゆかり
http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/data/file/data1_20110708035646.pdf

☆障がい者制度改革推進会議総合福祉部会意見書障がい者総合福祉法(仮称)制定までの間において当面必要な対策について清水昭彦
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sougoufukusi/2010/04/dl/0427-1-29.pdf

☆電照菊は悲しい(24時間、年中無休であることについて1)もうひとつの福祉
http://mouhitotsunofukushi.seesaa.net/article/289995360.html

☆重度重複障害児の地域生活を支援するネットワーク「e―ケアネットよっかいち」の1年目県立特別支援学校北勢きらら学園米本俊哉
http://www.kangaeyo-kai.net/chiiki/chi130522_1.pdf

☆公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団2012年(前期)一般公募「在宅医療研究への助成」による研究にご協力いただく皆様へ
NPO法人地域生活を考えよーかい李国本修慈
http://www.kangaeyo-kai.net/chiiki/chi120807_1b.pdf

☆地域生活を考えよーかいhttp://www.kangaeyo-kai.net/


デスクトップにダウンロードして、ご覧下さい。

2013年度認定看護師教育課程訪問看護コースでのお話し内容

chi130705_1.pdf(Adobe Acrobat 文書)




PDFファイルをご覧になるためにはAcrobat Readerが必要となります。 また、雑誌の付属CD−ROM等にも掲載されています。
Acrobat Readerダウンロードページ

本文終了


この文書に対する、感想、意見、各種問い合わせ

【地域生活を考えよーかい】
トップページへ戻る