地域生活を考えよーかい

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勉強会 吸引について

事業所内べんきょーかいの内容です。

作成日:2004年12月1日
掲載日:2004年12月4日
作成者:地域生活を考えよーかい
有限会社しぇあーど
李 国本 修慈


 今回、とりあえず、日頃、必要に迫られ行う(行わざるを得ない?)吸引に関して、「日々吸引をしているヘルパーの中には慣れにまかせて基本的な部分が抜けていたりすることもあるのでは?」ということで、注意点、危険性などを教えてほしいということで、以下、基本的なことを羅列してみたいと思います。

 医療的ケア(医療行為ではない)については、別添資料や、日々のこうのいけでの活動を通して、もしくは、国本に尋ねていただければお応え(応えではない)していきますので、そんな中から感じ取っていただければありがたいです。

 はじめに…と、言っても、何からお話しすべきか?、人体というモノの解剖的なことを知りえていればお話しも解りやすいと思うのですが、とりあえずは、吸引というくらいなんで、何かを「吸い取る(吸い、引く?)」ということなんでしょうが、その何か?とは、たいていの場合、喀痰であつたり、その場所(多くは口腔内=口の中~喉元あたり)であることから、食物残渣物であったり、喀痰でもない唾液(喀痰と唾液の違いは如何に?)であったりすると思います。

 たいていは、必要でないもの(不要なもの=かといってなくていいというものでもない)で、たいてい(本来)その排泄物(喀痰など)は、代謝によって生じる不要なモノ(生成物)として、排出(対外へ)されるということを人間は生理的に身につけていると言えるかと思います。

 しかし、しょうがい児・者などといわれる方など、なんらかの理由(いろいろありますが)で、浸出液(その発生メカニズムも知っておきたいところです)、分泌物などが必要以上に貯留したり、排泄できない場合には、それを他動的に排除することが必要になります。

 その行為のひとつを「吸引」と言います。

 「吸引」にも、随時的(一時的)に行うものと、持続的に行うものとがあるのですが、ここでは、みなさんに必要とされる「一時的(随時的)な吸引」=「気道(呼吸に関する)の確保」を目的(目標)に行うそれ(吸引)について考えていきたいと思います。

 ただ、「目的」と記載しちゃいましたが、「目標」と置き換える感性も必要かとも思います。

 我々が行うそれ(吸引)は、医療的な視点のみの目的(呼吸器疾患等による分泌物の除去など)となるものではなく、その本人の呼吸の援助(支援=サポート)が最大の目的であるということも、確認しておきたいと思います(ここいらは、また、「医療的ケアについて」などのお話し会などができればと思います)。

 で、「一時的(随時的)吸引」はなんで必要やねん?と言うことですが、咳嗽(ゴホン!とかいう咳のことです)の誘発(咳嗽反射などともいう)や喀痰の喀出、または口腔内の異物(必要でないものと受容できないものなど)の排出ができない方の場合、それによって気道の閉塞や肺換気量(酸素と二酸化炭素などの喚起ですね⇒肺の機能とその重要性についても勉強しましょう)の低下、上気道感染等をきたすことになります。

 そういった状態(状況)を回避するため=できるかぎり当人さんの呼吸が楽になるように、吸引用チューブ(カテーテルなんぞと言ってます)を上気道(口から咽頭=喉もとあたり)に挿入し、吸引装置(いわゆるバキュームマシン?とは言わないか?)を用いて分泌物などを除去する(窒息…は大袈裟にしても、誤嚥性肺炎などを防ぐ為)手段として、それを行います。

 で、そういった随時的な吸引が必要な方として、@.自力で咳嗽や喀痰喀出が困難な方、A.喀痰の粘調度が高い方、B.意識レベル(覚醒度などと言ってもいいか?)の低い方、などがあげられるかと思います。

 で、その手法なんですが・・・

  1. 深く入りすぎないようにあらかじめチューブを挿入する長さを決めておく。
  2. 適切な吸引圧で、吸引チューブを不潔にしないように、吸引する。
  3. 咽頭にある痰を取り除くには、鼻腔から吸引チューブを挿入して吸引した方が痰を取り除きやすい場合もある。
  4. その場合、鼻腔粘膜などを刺激して出血しないようにチューブを入れる方向等に注意しながら挿入する(以上、「盲・聾・養護学校におけるたんの吸引等の医学的・法律学的整理に関するとりまとめ」(9/17)から抜粋)。

 以上が基本的な手法ですが、実施前後に物品の確認として、VACCUMsystem(吸引装置)の確認が必要です。

 その装置については、メーカー各種色々ですが、多くは電動ということで、屋外等で使用する際には、充分な充電と、稼動不可時(緊急時)の対応も考慮しておく必要があります。

 吸引装置については一般的に、吸引瓶内の廃液量の確認(当然ながらいっぱいになるとバキュームはききません)、消毒液の確認、吸引瓶の栓の密閉の確認などが必要となります。

 吸引カテーテルの接続部もしっかりと差し込まれていることも確認がいります。

 逆に言うと、吸引すれども吸引できない場合は、上記のいずれかに該当しないかを確認すれば、回避できるかも?と、言えます。

 手技の順次としては、@.カテーテルの吸引機への接続、A.水(蒸留水など)の通水、B.口腔内、又は、鼻腔内へ、目的の部位(咽頭など)まで、圧がかからないように(ネラトンの場合は接続部で折り曲げるなど)挿入し、C.カテーテル内に吸引圧を加え、先端をくるくる回転させながら吸引する、というところが一般的です。

 注意点としては、カテーテルで、口腔内粘膜を傷つけない(粘膜壁へのカテーテルの接着やカテーテル先端でのつっつきなど)こと、できるだけ短時間で行うこと、と、気管内への吸引はこの勉強会では行わないということとします。

 注意点については、ケアを受ける立場でイメージしていただければおのずと…と思います。

 気道内分泌物について…上気道の粘膜は、繊毛上皮で被われ、無数の粘液線からの分泌物で湿っているといわれています。

 その(繊毛)役割は、いわゆる異物⇒埃、微生物(細菌、ウィルスなど)、粘調痰などを粘液内に取り込み、咽頭まで運び出す(繊毛運動などと言います)ということを行っており、咳嗽とともに気道の浄化作用をもたらしているといえます。

 ここで、例えば、気管切開などを行っている方についていうと、@.鼻腔からの吸気による吸湿(鼻には、加湿の役割も在ります)が不可となる、A.気道内の乾燥により、繊毛は湿潤を失い繊毛運動が抑制される、B.カニューレの刺激や気道内感染により炎症をきたすと、反応(生体の防御反応)として、分泌物が増加する、C.胸腔内圧を充分にあげることができないので、咳嗽誘発ができない、D.粘調性分泌物が貯留し、気道内やカニューレ内を閉塞する、E.分泌物の貯留は細菌の絶好の培地(住処)となる、などがあげられます。(照林社・改訂版わかりやすい看護マニュアル参照)

 これらのことから、気管や気管支における粘液の分泌及び排泄や、肺胞内での浄化作用、咳嗽のみっつによって、気道の清浄機能は成り立っているといえます。

 ですので、上記不具合などにより、無気肺や肺炎を併発しやすい状況になるといえます。

 よって、吸引時は、無菌的、かつ効果的な操作を要し、更に加湿や体位ドレナージなどもあわせて行うことが必要であるといえます。

 そういったことなどからも、重度しょうがい児・者などといわれる方々の支援活動を行うにあたっては、的確な手技⇒例えば、「無いところをいくら吸引しても無効」であるとか、身体に及ぼす「環境(室温・湿度、空気の清浄度など)の整備」が重要になるということです。

 そして、こういった活動拠点(こうのいけスペースなど)においては、咄嗟の吸引必要時などの遭遇に対しても、従前の準備や伴う物品管理、後始末なども重要であることを認識していただきたいところです。

 更に、そのケアを行うにあたっての、利用者さんの反応をしっかりと感じ取ることが最も重要で、それを記録として活かし、自らの手技等も合わせたアセスメントができればと思います。


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