地域生活を考えよーかい

放課後活動を考える

千葉放課後連ニュース 2002/9/14号

掲載日:2002年9月24日
作成:NPO法人あかとんぼ福祉会理事長
千葉放課後連事務局長 松浦俊弥
(千葉県立四街道養護学校教諭)


すでにMLや新聞、テレビでの報道等で御承知の通り、支援費の額(案)が公表されました。詳しくは社会福祉医療事業団のホームページにPDFファイルで資料が掲載されています。

障害児放課後クラブに関連する「児童デイサービス事業」については次のような額となりました。

市町村はこの額を基準として利用額を決めますが、地域によってプラスアルファされる割合も決まっていて、この額より大幅に変わることはないようです。

また利用者負担については、利用する児童と同一世帯にいる家族のうち納税額が最も高い者を対象として、納税額により14段階に分けてあります。生活保護世帯は負担ゼロですが、だいたい平均的な納税額だと、上記の5割前後の負担となりそうです。とにかく詳細は一度、御自分でご覧になってみてください。

ここで個人的主観を述べさせていただきますと、児童デイサービス事業の利用料が「こんなに安い???」とは思っても見ませんでした。ちなみに18歳以上を対象とする知的障害者デイサービス事業は段階の高い方で4時間未満2960円、もっとも低い方で2350円です。

児童デイにはこの段階分けすらありません。

児童デイと知的デイで1000円以上も単価に違いが出るのはなぜでしょう。それは「子ども」だからでしょうか?日本の社会は「子ども」といっただけで、大人の半人前、というような見方があるような気がします。

行動量や活動量を見れば、何事にも興味津々な子どものほうが断然その範囲も広くなるし、体力的にも相当なものがあります。走っていく子どもを追いかける仕事ってかなり大変ですよね。むしろ発達支援なども考えると子どものケアの方が、大人より充実されていてしかるべきか、と考えるのですが。

1910円で4時間では、ほとんどが原則マンツーマンで対応している千葉県内の障害児放課後クラブにはまったく使えないことが良くわかります。1時間あたりの単価は約478円。

1人分の人件費にもなりませんね。デイサービスは4時間を一単位で数えますので、仮に3時間預かっても1910円に変わりはないのですが、それにしても1時間約633円。これでもいまの相場では時給になりえないでしょう。

では1910円で3時間預かり、3名の子どもを2名の職員保育する、となった場合はどうか。

3時間で5730円の収入となり、1名の職員に時給700円を保証するとしたら、2名3時間で4200円。余りが1530円ですから、これを他の運営費に回す。1日に6名の子どもを預かるところなら、月20日間の放課後保育で人件費以外に約60000円の運営費が作れます。また、9名預かるなら90000円になります。でも、都市部では家賃は10万以上かかる放課後クラブもあり、その他に光熱費、通信費、雑費、保険料、車両維持費がかかることを考えれば、この手段をとってみても運営は難しいとおもいます。

2名の子どもを1名の職員が4時間保育する、となれば、2名分の利用料3820円ですから、時給700円の職員なら4時間で2800円、差額が520円です。1日に6名の子どもが利用するなら差額だけで1560円、20日間で31200円ですね。1日9名でも46800円。これでもやはり運営が難しい。

3名のに1名の職員で4時間保育なら3名分の利用料5730円で時給700円の4時間を引くと差額が2930円。1日に6名の子どもで20日間なら、人件費を除くと128000円。9名なら約18万円。これくらいなら何とかぎりぎり、といったところでしょうか。

ということは、今回の児童デイの額、4時間未満1910円で可能な放課後保育の運営は、最低基準として1日に9名以上の子どもを4時間保育し、そこに時給700円以下の職員を3名以下つける、というスタイルになります。又は1日に6名の子どもを2名の職員、でも、都市部でなければ何とかぎりぎり、といったところでしょうか。これはかなり大雑把なシュミレーションですが、どうでしょう、運営者の皆さんはこの条件で、御自分の団体が運営できると思われますか?

「あかとんぼ」は全然無理です!とてもじゃないですが、3名の子どもを1名の職員、というわけには行きません。施設に頑丈な鍵をかけて、窓に鉄格子をつけて、室内からありとあらゆる危険物を排除して、という無味乾燥な人権侵害そのものの運営をするなら別ですが。

子どもの「思い切り遊びたい!」という意欲を最大限に尊重する「あかとんぼ」ではそんなことが許されるわけはありません。それはもはや「障害児放課後クラブ」ではなく、単なる「収容施設」と化してしまいます。

いまは毎日10名前後の子どもが利用していますが、そこに7から8名のスタッフが時給800円前後できています。家賃はたった1万円ですが、それにしても4時間1910円ではいまの市町村補助の方がずっとましです。

指定事業者になるとそれなりに行政のチェックも厳しくなると思います。決まった金額以外の徴収はもちろんできないでしょう。月会費とか入会金といった制度もなくさなければなりません。当然、不足する運営費を寄付やバザー収益で賄うことになり、今以上に仕事がきつくなる恐れはあります。

利用者側の視点で見れば、いまより利用者負担が安くなるところは結構あるとおもいます。1日4時間預けておそらくは1000円程度の負担でしょうから、毎日預けても月に2万円を越えるくらいの利用料になるでしょう。

しかし、いまは共働き家庭だから毎日利用したい、あるいは、週に2回、3回、家庭の都合により好きな日に預かって欲しい、というニーズに対応できても、支援費として利用することになると、ひょっとしたら「あなたは月に何回まで」と決められることになるかもしれません。

費用は安くなっても利用がしにくくなる、という恐れはあります。

これはまさしく「デイサービス」の料金なのでしょう。「障害児の放課後ケア」の料金ではありませんね。「デイサービス」の目的には生活訓練等も入っていますが、それは子どもの発達を支援する内容を指してはいません。あくまでも室内で日常生活動作の訓練を行う、といった認識でしょう。

しかも、この額はどう見ても「安全性に配慮され、屋内でも身体活動が活発に行える大型の施設」における「デイサービス」の料金であるとおもいます。先ほど話しましたように、それ専用にコンクリートで作られた施設で、簡単に屋外には出られないような手立てが各所にしてあり、屋内に危険な箇所や物はなく、整然としたフロア―で大型の訓練遊具を使って遊ぶ子どもたち、を想定したものです。それならば職員は2,3名で充分でしょう。

しかし、地域で、街中で、生活臭のある中で障害のある子どもが活動する、遊ぶ、といったとき、地域の環境や建物の構造上、危険性が高い、となればそこは人手でカバーするしかありません。地域生活支援型の小規模施設であれば、一般の社会福祉施設よりも人手がよりたくさんかかって当然であるし、逆にそういう配慮がされなければ、障害児者の地域生活支援は難しいと思うのです。国や県が理想としていていることと、現実の支援策とでは大変に大きな矛盾があると考えます。今回の支援費案では、障害のある子どもたちが「児童デイサービス事業」を使って「地域」で「安心」して「遊ぶ」環境を整えることは不可能だと考えます。
千葉放課後連学習会で永野幸雄先生の言っていた「国が作るものにろくなものはない」というお言葉、よくわかりました。
県の補助も難しそう、それなら、と期待していた支援費も使えそうにない、だからといって市町村の補助も今すぐもらえそうにはない、なんだか八方ふさがりの感があります。

こんなときこそ、皆さんでどうぞ知恵を出し合って窮地を脱する手立てをともに考えていきましょう!

無駄かもしれませんが、少なくとも児童デイの利用料を知的デイのレベルにまで引き上げて欲しい、と何らかの形で厚生労働省に意思表示はしたいとおもいます。皆さんの御意見をお聞かせください。可能なら千葉放課後連としての統一見解にしたいと思うのですが。

また、同時に堂本知事に対しても千葉放課後連として「予算化された介護補助制度の公正な執行を」との要望書を出したいとおもいます。

国、県への働きかけについて来週中にご意見を下さい。


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