地域生活を考えよーかい

地域生活を考えよーかい

あぜくら保護者みなさんとの勉強会

今、これからも地域で暮らすことを考えてみましょう。
〜利用契約(支援費支給)制度への移行準備年度に考えたいこと〜

掲載日:2002年4月19日
文責:地域共生スペース・ぷりぱ
李 国本 修慈


 前略です。とりあえずは来年度に迫った新制度=支援費支給制度にむけた準備年度として、皆さんと共に考えたいことなどについてお話ししていきたいと思います。

 社会福祉基礎構造改革という流れで障害福祉分野にも「利用契約」という制度が新たに始まろうとしています。ようするにこれまでの行政が主導でサービスを決定する「措置」が、利用者本位でサービスを選べる(選ぶ)「契約」となるということです。その理念は「ノーマライゼーション」という言葉に基づく「普通の暮らし」を実現するためのものと考えていいかと思います。

 支援費支給制度に間してはおってお話しをしていきたいと思いますが、まずはみなさん(本人と家族の方々)が、この先(明日でもあり、将来でもあります)どう暮らしていきたいのか?ということを少しでも広くイメージできればと思います。

1.今、どんな暮らしを望むのか?

 みなさんはあぜくら作業所という通所授産施設へ通われています。その施設内での活動の保障・充実は得ていると思うのですが、それ以外の時間の暮らしではどーなのか?。例えば週末、休暇。本人さんの主体的活動、余暇活動。家族の皆さんの介護休息、等など・・・。様々な望むべく暮らし(生活)があるならば、それを支えるサポート体制を知る、創る、整えることが必要かと思います。

2.望む暮らしをサポートする周囲の状況を知りましょう。

 使える制度として、@.知的障害者ガイドヘルパー制度、A.身体障害者ガイドヘルパー制度、B.知的障害者・障害児ホームヘルプサービス、C.短期入所(ショートステイ)、D.市単独事業など(タクシーチケット、送迎サービスなども)があります。生活支援事業として実際に活動をサポートする事業所が@.生活支援センターヴィ・リール、A.地域共生スペースぷりぱ、B.生活支援センターかいと、C.生活支援センターりんりん、D.生活支援センターれん、などがあります。相談事業所として、@.尼崎障害者支援センター(事業団)、A.地域療育等支援事業として阪神南圏域に「たじかの園」、「一羊園」、「砂子療育園」、「わかば園」、阪神北圏域に「ゆうゆう」などがあります。

3.自らの生活をサポートする体制を創るということ。

 私どもが生活支援とかいう事業をやってみて感じたことのひとつとして、生活支援に使える制度は、ここ数年、近辺自治体ともにほぼ出揃ってはきているのですが、それが機能していなかったいうことで、その理由の一つはサポートする事業者がなかったこと(これはヴィ・リール、ぷりぱができて以来、尼崎の知的ガイドヘルパー制度の利用が大幅に増えたことなどからもいえると思います)、と、もうひとつは、障害者といわれる方々を支えるのは「家族」であるといった意識が社会と家族=みなさんにも(多少の違いはあれ)あるんだろうなぁということです。ここで、おさえておきたいことのひとつとして「サポートの必要な方」は家族のみで観るのではなく「社会・地域でサポートする」ということです。なかなか当人さんの親御さんとしてはこれまでの社会の慣習などから、そんなに簡単に発想は転換できない方もいらっしやるかとは思うのですが、少なくても生活支援事業をしている我々などは、そういった意識の基に働いているということです。と同時に生活支援という事業も「サービス」であり、みなさんはそのサービスを利用する「消費者」であると考えてみてはいかがでしょうか?。そして、それらのサービスを消費することが「サポート体制を創る」ことに繋がると考えています。

4.生活をサポートする体制を整えるということ。

 なかなかここまでいく・・・というのは飛躍的かも知れないのですが、いわゆる「利用契約」制度においては、「自己決定」「自己選択」が必要になってきます。なかなか矛盾な点(これについては後述)も多い「支援費支給制度」ですが、これまでの行政決定による「与えられるサービス」ではなく「選べる(実際には選べない=現状)というより、選ぶサービス」になる(名目上)訳で、ようするに「選択性」を与えるという言葉とともに「自らで決めなさい」と国は言っているようなものと考えて差し支えないと思います。ここが、基礎構造改革のキーワードである「規制緩和」に「地方分権」なんですが、それを自らがしなければならないということなんです。具体的には前述の制度や事業者などを利用して自らの生活プランを立てなければなりません。そのひつとの手法として「ケアマネジメント」というのがあるのですが、支援費支給制度においては必ずしもケアプランをたててはもらえないというのが現状です。となると、みずからの生活のサポート体制をみずからで整えていく事が必要となってくるということです。

 そこで支援費支給制度についてお話しを進めて行きたいと思います。

 まず、支援費支給制度の主旨としては『ノーマライゼーションの理念を実現するため、これまで、行政が「行政処分」として障害者サービスを決定してきた「措置制度」を改め、障害者がサービスを選択し、サービスの利用者とサービスを提供する施設・事業者とが対等の関係に立って、契約に基づきサービスを利用するという新たな制度(「支援費制度」)とするものである。

 支援費制度の下では、障害者がサービスを選択することができ、障害者の自己決定が尊重されるとともに、利用者と施設・事業者が直接かつ対等の関係に立つことにより、利用者本位のサービスが提供されるようになることが期待される』とあります(平成13年3月6日の支援費Q&Aより抜粋)。 当初の理念から、かなり後退の感のある制度になりそうですが、すでに決定している点などを順次説明して行きたいと思います。

1.支援費支給対象となるサービス

 あぜくら作業所に通われるみなさんは、すべて「施設訓練等支援費」の支給決定を受け(それぞれの暮らす市から)、その支給費をもって、通所授産施設である作業所へ通います。と同時に、施設での就労・活動以外の時間を充実させるために利用するサービスをまとめて、「居宅支援費」といい、そのサービス内容は、@.ホームヘルプ、A.デイサービス、B.ショートステイ、C.グループホームの四つとなります。

2.支援費支給の申請〜決定までの流れは、

 @.必要サービスの申請(市へ)、A.市による「勘案事項整理表」などにより支給決定の勘案、B.勘案の結果を踏まえ、支給量の決定となります。10月から調査、申請、勘案、支給決定の事務が始まる予定です。

3.支給決定の内容は、

施設支援費の場合は@.支援の種類(知的障害者授産施設支援)A.支給期間「1ヶ月単位で3年間」、B.障害区分「3段階(未定、参考案資料参照)」、C.利用者負担額(未定)となります。居宅支援費の場合は、@.支援の種類(上記4種類)、A.支給量(1ヶ月当たり)、@.ホームヘルプは時間(単位は30分)、A.デイサービスは日数(単位は半日もしくは1日)、B.ショートステイは日数(緊急時などは支給量に制限をつけないとなってます・・・1.10資料・市町村の事務についてP18による)、B.支給期間は1年、C.利用者負担額は未定で、当初、居宅支援費には「障害区分」は設けないということでしたが区分を設ける方向(2段階のようです、ホームヘルプは除く)のようです。

4.支給決定を受けた方は、

複数の事業者と契約する事ができます。が、しかし、これだけの需要(例えばガイドヘルプにショートステイ)をきっちり受けられる供給量は現状では不足していると言えますので、むしろ支給決定量が調整される(減らされる?)ことが考えられます。

5.そして、最も押さえておかないといけないと思われる点のひとつとして「勘案事項」があるのですが、

以下(居宅生活支援費に関して)です。@.障害の種類及びその程度、A.その他の心身の状況、B.介護を行うものの状況、C.居宅生活支援費の受給の状況、D.施設訓練等支援費の受給の状況、E.支援費支給に係わるもの以外のサービスの利用状況、F.当該障害者の利用意向の具体的内容、G.当該障害者の置かれている環境、H.当該指定居宅支援の提供体制の整備状況があがってます。すでにお気づきの点があると思うのですが、ひとつ、サービス基盤の整備状況も勘案に影響するとなると、やはり「ないサービスは使えない」ということで、支給量として決定はしてもらえない(ここで既に理念とは違っている)ということになります。また、介護の行う者の状況を勘案事項に入れているというところも、いわゆる「ノーマライゼーション」、「本人支援」、「社会保障」といった観念からは違うように感じるところです。一応、国はそれぞれ、「介護を行う者がいる場合に訪問介護などの居宅生活支援費の支給を行わないという趣旨ではない」、「「サービスの基盤整備は重要な課題であり、支援費制度導入の趣旨を踏まえ、都道府県及び市町村は基盤整備に向けてより一層取り組む必要がある」とは言っています。

6.利用者負担に関しては

扶養義務者にも負担を求めることとなっています(ここについても社会保障、本人主体といった趣旨からずれているようにも思えます)。

 ということで、ここでは皆さんに「支援費制度」についての手続き的なことを知ってもらうことも重要なのですが、それ以上に、支援費支給制度をうまく動かす(これ、市=地方分権の力です、と、市は決して行政のみではないということ=協働作業)には、やっぱりどー見てもサービス量が不足しているということだと思います。 今、大事な事は、今〜今後の家族を含めた本人が「どんな暮らし(生活)を求めるのか?」ということ、そして、「それを実現できる社会資源(サービス量と種類)は、自らの地域にあるのか?」ということだと思います。

 これからは(今もそうですが)「地方分権」「規制緩和」に加え、「権利擁護」「第三者価」といった言葉がより重要な位置付けとなってくると思います。知的障害といわれる方々にとって、ノーマライゼーションを実現するには間違いなく個人を支援するサポート体制が必要であると思います。当人の代弁者=後見人でもあるご家族のみなさんの声、動きが重要であるかと思います。そのためには「知る」「動く」「繋げる」ことが必要だと考える訳です。

 理想論ではあかんのですが、それらを創っていくのも、本人・家族にサービス提供者、そして周囲の住民(市民)に行政を含めた協働作業であると思います。

 なかなか実現とはいかないまでも、今、制度は徐々に動き、さらに動かすのは皆さん及び、私達であるかと考えています。

 「地方分権」「規制緩和」・・・、ややもすると、国の責任放棄とも取られがちですが、それらをうまく動かし繋げて行く事が大切かと思っています。

 そんな繋がりが、「望むべき暮らし(生活)」を実現していくことになるのではないでしょうか?。そんなふうに考えながら、今後とも皆さんと共に考え、動いていきたいと思っています。以上です。早々。

 追記・・・あと、様々な情報を集約し、みなさんに発信したり、情報交換や考える機会を創ろうということで「地域生活を考えよーかい」というのを創りました。会則・会費等なしで、厚生労働省からの情報や近隣各市の情勢、「尼崎の生活支援を考えるネットワーク」などの情報を主に電子メールで送信させてもらってます。FAXでも送信させていただいてます。メールアドレス及びFAXをお持ちの方で、そういった情報が欲しい方は国本までお知らせください。


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