地域生活を考えよーかい

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「地域にあたりまえに暮らす」ことを支えるしくみとしての支援費制度を理解する

東京の岡部さんが三鷹市新福祉総合計画(案)検討市民会議障害部会委員みなさんへ宛てた提言書?です。

掲載日:2002年6月19日
作成者:東京都立大学大学院社会科学研究科
岡部耕典


三鷹市新福祉総合計画(案)検討市民会議障害部会委員各位

「地域にあたりまえに暮らす」ことを支えるしくみとして支援費制度を理解する

東京都立大学大学院社会科学研究科  岡部耕典

はじめに

 これから10年の地域福祉計画の立案および福祉サービスの制度設計に際し、平成15年度から導入される支援費制度は、大きな前提条件となります。

 しかしながら、制度を小出しに公表する国の姿勢の問題もありその全容はいまだ不明で、イメージ的理解や抽象的理解に留まっている部分が多く、一般市民はもとより障害当事者や家族・サービス事業者・地域行政の窓口従事者や担当ケースワーカーも含め、統一的基盤の上にたって議論のできる理解ができていないのが現状です。

 もとより、今回の検討市民会議障害部会において、制度のディテールについて判りやすく説明するのは三鷹市地域福祉課の担当と計画されておりますが、制度の外形的説明から踏み込んで「施設から地域へ〜居宅支援サービス充実の必要性」「実際のサービス利用申請のイメージとサービス利用支援の必要性」ということについてもイメージをつかんでいただきたく、参考資料を提出しますのでご高覧願えればと存じます。

施設から地域へ〜居宅支援サービスの充実の必要性

まとめ

 地域で暮すことをサポートする在宅支援サービスは、介護保険と同じく支援費制度でも、しくみの中核を占める重要なものです。しかし、積極的な広報や利用支援の不足もあってまだ認知や利用もすくなく、市民会議のなかでも支援費の議論のなかでも、入所の枠の保障やそのための箱モノ整備をめぐる議論の陰に隠れて、ほとんど議論されないのが現状であるように思います。

 しかし、「障害のある人が地域であたりまえに生き生きと暮す」とは、居宅ケアの充実によるところが大きいのです。話題の生活支援センターの整備も、まさにこの在宅ケアへの大転換の時代に在宅する一人一人のサポートをするためのしくみであり、その前提が忘れられてしまうと、「もうひとつのハコもの要求」になりかねない懸念がでてきます。

 また、市民会議といえども政策提言の議論をする以上、予算配分の議論は最終的には避けてはとおれないものであるわけですが、都のみならず、三鷹市も民生費の総額を変えられないというニュアンスの発言もあり、また、施設ケア関係(通所施設を含む)の予算請求は組織的かつ熱心に行われる現状を考えると、市民会議は居宅介護支援サービスの推進を提案する積極的な政策提言をしない限り、居宅支援サービスの予算は増えないのではないかと懸念します。

実際のサービス利用申請のイメージとサービス利用支援の必要性

@「このサービスを使いたい」という利用者の「申請」

これには障害手帳は必須ではありません。
申請は、本人の名前であれば、友達からでも、施設職員からでもできます。

※でも、多くの区市町村では、「どういうサービス利用をしたいか相談したい」という対応のために、職員が増やされる予定はないようです・・・

A市の職員が「実情」を聞き取りをする

介護保険では、これは民間のケアマネージャーも代行できますが、支援費では職員だけです。

※でも、多くの区市町村では、そのために職員が増員される予定はないようです・・・

B聞き取りをした結果で「考える」

考える項目は国がマニュアル化しています。
しかし、決定するのはそれぞれに市で、決定条件等もブラックボックスです。

※介護保険では、コンピュータ化で要介護認定は標準化されていますが・・・

C決めて通知する

「支給しない」・「保留する」という通知もありえます。
「支給しない」の場合は理由を明記する必要があります。
しかし、理由としては、「予算がない」「つかえるサービスがない」といった理由もありえます。
しかも「保留」の場合はさらにあいまいで、保留期限も明記しなくてよいようです。

※サービスが本当に必要な当事者であっても、地域でサービス供給が不足しているとき、「支給せず」「保留」という対応を行われる懸念があります。

D行政の決定に不服があっても特別のしくみはなし

介護保険とちがい、専門窓口はない
「行政不服審査」で請求するしかない、といわれています・・・

※しかし行政不服審査は利用者が気安く利用できる制度でしょうか・・

まとめ

 措置費制度は、「行政側が一方的にサービスを決定する(措置:行政処分する)制度、支援費は、利用者が主体的に契約により自らサービスを選択する制度、と一般には言われてきました。しかし、同じくそういわれた介護保険でも現実にはそうなってはいないし、上記のように支援費制度の要介護認定に相当する部分をみただけでも、利用保障という面では介護保険にも劣る状態です。
 これでは、コミュニケーション能力や知的能力に障害をもつ人はもとより、福祉サービスをうける当事者と行政職の専門家では、圧倒的に、知識・権威・交渉力に差があるのが普通ですから(これを非対称な関係といいます)支援費下におけるサービスをうける権利とその量は、ほとんど行政側の裁量によって決められてしまうことが危惧されています。

 そうならないために、国は障害者ケアマネジメント制度を構想し、東京都は、「福祉サービスの積極的な利用支援」ということを打ちだしてきました。高齢者のケアマネジャーと違い、障害者ケアマネジメントは、お金に直接つながる資格制度ではなく、むしろ、事業者・当事者・市民の立場から、行政のケースワーカーと連携を組み利用者に近い立場から必要なサービスプランを当事者とともに考え、当事者単独では困難な行政への申請や交渉を援助するしくみといわれています。そのために当事者も含めた広い立場の参加者を得て東京都の障害者ケアマネジメント従事者研修が行われており、調整の場は、介護保険と同じく、サービス調整会議とよばれ、15年度よりの区市町村での実施を国は求めています。三鷹市では、こういった取り組みはどうなるのでしょうか・・・

 参考までに、心のバリアフリー市民会議の今年の取り組みである障害福祉サービス利用支援事業「あどぼ三鷹武蔵野」について、パンフレット資料および7月27日セミナーのちらしを添付いたします。


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