地域生活を考えよーかい

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支援費制度移行に伴うサービス基盤の整備について
〜兵庫県緊急一時保護家庭制度の現状と今後の展開から考える〜

掲載日:2002年7月3日
文責:李 国本 修慈


前略。
本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございました。差し迫った来年度からの新制度=支援費支給(利用契約)制度についての課題についてお考えいただく参考にしていただきたくお願いいたします。

 まず来年度から始まる利用契約(支援費支給)制度は平成12年度6月の「社会福祉の増進のための社会福祉事業の一部を改正するなどの法律」の成立に伴い、社会福祉事業や措置制度の見直し=社会福祉基礎構造改革のひとつとして障害者福祉サービスについて新たな仕組みとしたものであります。この制度においては「利用者本位のサービスの提供」を基本とし、「事業者との対等な関係」、「自己決定(みずからの選択)」により契約を行い利用する仕組みということであります。

 平成12年度以降、この制度の内容が明らかになっていくに従って、当初の理念=「ノーマライゼーション」「インクルージョン」から後退していく感が否めないのは多くの方々が指摘するとおりです。

 そこで、いわゆる「措置制度」から「契約制度」=消費サービスに移行するにあたって、当事業所から見える問題点を「サービス基盤の整備」について考えてみたいと思います。

 まず、支援費制度においてはその対象となるサービスが決まっており、居宅生活支援(ここでは在宅サービスについて述べてみます)の対象となるサービスは、1.ホームヘルプ、2.デイサービス、3.ショートステイ、4.グループホームとなります。その内の3.ショートステイについて具体例を挙げていきたいと思います。

 ショートステイ(障害者)とは国の「短期入所事業」として県が実施している事業で、いわゆる緊急一時保護といった利用から、レスパイト(介護休息)的な利用までその需要価値は高い事業であるといえます。

 受け入れ先は主に福祉施設(身体・知的障害者入所施設・児童福祉施設・高齢者入所施設など)となっていますが、兵庫県では「緊急一時保護家庭」という名目で、いわゆる一般家庭をショートステイ先と認可し一時預かりを行う(宿泊及び日中・夜間の預かり)制度を設けています。

 そもそもショートステイは上記理由から需要度は高いものの、「居住地から遠い」、それに伴う「通学・通勤に支障がある」、「手続きが頻雑」などの理由で「使い勝手」がよくない制度のひとつであったと考えています。

 そこに平成12年12月から県の「一時保護家庭」の認可を受けた当事業所では瞬く間に利用実績が上昇するという結果となっています。昨年度のデータ(別紙参照)ではひとつきの利用件数(宿泊及び日中預かりを含め)が150件を超えるといった状況にあります。この需要は今後も増えて行くことは間違いなく予想されるところです。

 そういった中、支援費制度移行となる訳ですが、せんだって行われた「指定事業者説明会」において、「ショートステイを提供する事業所は社会福祉法人に限定」ということが明らかになっています。これについては異義(別紙参照)のあるところですが、支援費に対する支給申請も間近(10月から始まります)となっているところ、早急に現状のサービス提供量の後退のなきような基盤整備の取り組みと対策が必要であるかと考えます。

 問題を絞ると我々の事業所が支援費制度の短期入所指定事業所にならない場合、県は「緊急一時保護家庭は残す」ということは明言(別紙参照)しているのですが、危惧されるのは予算編成に係わる事業の縮小(利用要綱の改悪=利用制限が設けられる)が起こらないかということです。

 支援費制度の対象となると国庫事業として国が1/2負担、県・市ともにが1/4負担となるのですが、支援費制度の対象外となると、現在県の単独事業(全額県負担)として行われている緊急一時保護家庭制度の事業費負担を市との調整で行うことが考えられます。

 今回の制度移行では福祉サービスの窓口は「市」へと移行するというのが大前提でありまして、となると市が財政の理由により利用制限を行う可能性があると考えられます。

 支援費制度は前述したとおりの「利用者主体」、地域への生活基盤構築を目指した制度であり、それ(地域生活への基盤構築)は障害者計画(ノーマライゼーション7ヶ年計画=今年度で終了)にもあるように、支援費制度のみで賄うものではありません。

 で、あるとすれば、地域サービスの基盤整備は今最も重要な課題のひとつであると言えます。そこには県の市に対する姿勢が重要になってくると考えます。

 基礎構造改革のキーワードのひとつである「地方分権」について考えてみても福祉サービスに対する主体は市でありますが、その方向付け、理想的な方向への誘導責任は県にあると考えるのですがいかがでしょうか?

 尼崎市においては障害者プランについても策定の意向はないようなのですが、先に述べた基礎構造改革における福祉サービスについては、今年3月5日の厚労省企画課からの通知(別紙参照)にも「障害者プランの推進について、・・・その目標達成に努められたい」となっています。障害者計画においては障害者基本法において「努力義務」となっているのですが、それにしても県の役割ということを是非とも「地方分権」の中で充分に発揮していただきたいと願うところです。

 このようなことから、是非、障害福祉関係者(県障害福祉課、支援事業コーディネイター、こどもセンター、受け入れ施設等)による「連絡調整会議」にて、阪神間のショートステイにおけるサービス基盤の整備について検討していただきたいと考えています。

 繰り返すのですが、この制度移行(県から市への福祉サービス窓口移行)の時期に県の役割及び責任は重大であると考えます。また小数派といわれる障害児・者といわれる方々の暮らしそのものにもっと多くの方の意識が向かうようにぜひとも問題提議していただきたいと思います。早々。


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