2003(平成15)年2月2日大阪・阿倍野にて
<プログラム>
講演:岡 留美子さん(精神科医)
シンポジウム:小学校教諭、中学養護教諭
思春期病棟の臨床心理士、精神科医(岡さん)
作業所当事者(精神障害者)
コーラス:はななコーラス隊
(生駒、授産施設「コミュニティースペースはなな」)
エイサー:沖縄の伝統芸能エイサー
(まつばら作業所)
主催;大家連ほか。
●講演内容●
『こどものココロが出会う病』
(岡 留美子さん;奈良で精神科クリニック開業、予備校や大学の相談室での経験があり、他の精神科医より、子供たちとの関わりが少し多い。)
*ほめること*
- ・「子供のころ、大人にほめられた時のことを思い出してみてください。」
- すぐに浮かんできますか?
誰に、どんなことを言われましたか?
その言葉に、その時、どう、感じましたか?
→ほめられたその言葉に、自分はどのように感じ、その後の人生の選択や、職業選びにどのように影響しているだろうか?
- ・「最近、(大人になってから)子供をほめたことを思い出してください。」
- →その子は、その時、どう感じ、その後、その言葉を思い出し、生きていく うえでの支えになっていくか?
<1>どのような病があるか?
- ○子どもとは・・・。
- 小学生から大学生まで。
大学生にも不登校は存在する。
20歳までと、年齢ではくくれない。(早熟な小学生もいれば、未熟な大学生もいるため)
- ○こころのつらさ、しんどさのアピール
-
- 小さな子供は言葉で表現しにくい。
言葉で表現できないとき、体の不調(腹痛、頭痛など)として、でてきやすい。 - 成長するにつれて、行動として表れてくる。
自傷、非行、いじめ、摂食障害などなど。 - さらに成長につれて、心の悩みを自覚し、言葉として表す。
不安感、孤独感、恐怖感、対人恐怖、幻聴、幻覚など。
「死にたい。」「嫌われている。」「見張られている。」
「悪口を言われている。」
- 小さな子供は言葉で表現しにくい。
○子どもの心の病
- *思春期*
- とても悩み、傷つきやすく、揺れ動く時期。
周囲にアピールする形で行動し、訴える。
- 保健室;養護教諭は、自分たちを評価しない存在。保健室登校。休み時間の度に、いつもくる子。
- 「病気ではなく、障害」;ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)
- 統合失調症;(精神分裂病は、精神自体の分裂をイメージし、差別を助長するため、名称変更された。)
幻聴、幻覚、妄想など。思春期から発病することが多い。薬での治療、症状コントロール、リハビリ。対人間での障害が残ることが多い。 - 高次脳機能障害;事故や手術後の機能障害。認知障害、人格が変わるなど。
- 社会的ひきこもり;半年以上、社会参加しない。
元々は精神的な病気を抱えていないが、引きこもっている間に、症状がでてくることがある。
<2>具体例
- *Aくん、社会的ひきこもりのケース。中1後半より、不登校。昨年、通信高校へ。
(具体例、とっても長いので、省略です。とってもいい話なので、コピーならできますので、言ってくださいね。ここでは、要点のみにします。)
*Aくんは、不登校で来院することを告げられず、精神科に来たため、話はできず、母親が定期的に通院するようになる。
*母親に対し、おりをみながら、少しずつ、基本の接し方を話す。
- ◎『基本の接し方』とは・・・
-
- 傾聴ー話をきちんと聞き、本人の思いを聞く。
- 罪悪感を受け止め、居場所を提供する。→「家にいていいんだ。」と実感させる。
- ほめる→ほめるべきことは、きちんとほめる。
- 言葉と態度は一致させる。→相反するメッセージ(言葉と表情や態度が違う)は敏感に感じ取り、つらい思いをさせる。
- 求められるまで、アドバイスはせず、見守る。
→必要な時はできるよう、アドバイスのタイミングに気をつける。 - 話題を共有する。 →学校以外のいろんな体験を共有する。
- 自助グループ、親の会に参加する。
※Aくんは、家で「塩の結晶」を作ったり、「ひとり旅」に何度も出かけ、中3の冬、自ら、通信制高校への進学を決める。
**最近の母親の言葉から・・・
- 「私がマイナス(−)から、ゼロ(0)になるまで、あの子は引きこもって、私たちを待っていてくれた。」
- Aくんのひきこもりを否定しない。
Aくんは体を張り、親の成長を促している。
親として、自分が成長したことを謙虚に認めている。
→Aくんの母親は、特別ではない。
自分の価値観、考え方を見つめなおし、日々、Aくんと接する中で、成長してきた。
基本の接し方を素直に受け入れ、とてもいい家族関係を築いた。
<3>まとめ(シンポより)
- 子どもの姿を通じて、大人が学ぶことができる。
- 子どもが語る言葉を受け止め、きちんと聞く。「なぜ??」と原因探しをしない。
- つらい体験を乗り越える力は、その人の持つすばらしさ。
以上、岡先生、講演内容です。