地域生活を考えよーかい

地域生活を考えよーかい

メインストリーム協会アテンダント研修
〜医療的ケアについて〜

これから地域の自立生活を支えようとされるアテンダントさんたちへのお話内容の一部です。

作成日:2003年9月13日
掲載日:2003年9月16日
作成者:李国本修慈


医療行為とは・・・
医師法による「医業」としての行為。医師法等・保助看法など、独占業務法?はなかなか変わらない??でもどっかで法も変えないといけないと思う。
医療的ケアとは・・・
メインストリーム協会が定めるところ(でいいか?)→ごく当たり前に暮らす(生活する)ために必要な支援(ケア)・・・の日常生活援助行為。又は、病院等で行われる急性期の治療目的ではなく、日常的に介護として行っているものとして「医療行為」とは異なる「医療的ケア」と呼ばれています。【下川和洋氏・による】そんなことを意識はしておきたいところです。
医療的ケアについて・・・
家族が行っていることの意味として、ひとつは「家族でもできる」ということ。専門教育を受けていない人であっても技術的には医療的ケアを行うことが充分可能であることを意味しています。【北住映二氏・心身障害児総合医療療育センター外来療育部長による】・・・と言っても、「誰でもできる」というものでもない・・・。何が大切か?を考えましょう。
医療的行為についての責任の所在・・・
「責任はそれぞれが分かち合う」という考えの下、その責任については、「依頼責任」、「指導監督責任」、「実施者責任」、「総合責任」ということがいえると考えます。【鈴木康之氏・東京小児療育病院長による】 また、鈴木氏は「本人や家族が希望し医師や看護師が指導監督する体制にあるのに、それを行おうとしない介護者がいるとすれば、それを行わないことで障害者・児といわれる方々の健康が害され、生活の場が制約されるようなことは障害児・者が健康で文化的な生活を送るという基本的な人権を侵害することにつながります。今はそのような、『実施しない』責任を追及する時代に変わってきたと考えます」(『はげみ』平成10年12月号・11年1月号)と述べています。で、その責任がそれぞれ果たせるシステム創りが必要ですね、。そのひとつとして、「できるヘルパー」さんの養成・・・を願っています。一事業者というより、一市民として。。
疾患について・・・
  1. 筋ジストロフィーデュシェンヌ型筋ジストロフィーは19世紀に記載された筋力低下を主症状とする疾患です。イギリスでは1852年にメリオンが詳細に記載しており、おくれて1868年にフランスのデュシェンヌが報告しました。現在ではデュシェンヌの名前が残されていますが、彼は臨床神経学に様々な方面で偉大な足跡を残した神経学者であったことから当然のことかもしれません。19世紀から20世紀のはじめにかけて活躍したドイツのエルプは1914年に長大な論文を書き、この中で彼は病理学的に同じ様な所見を呈する疾患群をまとめて進行性筋ジストロフィーという名前を与え、筋萎縮という言葉も定義しました。彼によれば筋萎縮(muscular atrophy)脊髄にある運動神経の異常によって(神経原性といいます)二次的に筋肉がやせた状態であると定義したのです。これに対して神経の異常がなくて筋肉がやせる(筋原性という)のは筋のやせ(muscular wasting)と呼ばれます。日本語では筋原性のやせも含めてすべて筋萎縮と呼ばれています。
     筋萎縮症は脊髄の運動神経が冒された神経原性疾患群であり、これに対して神経原性でない原因で筋肉の異常を来している疾患群をミオパチーと総称します。ミオパチーにはたくさんの疾患が含まれています。進行性筋ジストロフィーはこのうち最も患者数が多く、遺伝性であり、進行性筋力低下をきたすという2つの条件を満たすミオパチーです。筋ジストロフィーは遺伝形式で分類されています。
  2. 脊椎損傷・・・「脊髄」は、神経細胞の集まりである灰白質を神経線維の集まりである白質がとりかこんでできており、脊柱管(せきちゅうかん)という背骨(脊椎)の中央の穴を首から腰まで通っています。脊髄では皮膚からの知覚を大脳に伝える上行性(じょうこうせい)神経線維と、大脳からの運動の刺激命令を筋肉に伝える下行性神経線維が走ります。
     さらに、交感神経や副交感神経である自律神経という内臓の運動・分泌・知覚をつかさどる神経も脊髄内を一部走ります。このように、脊髄はいわば電話線や光ファイバーのようなもので、脳と皮膚、筋肉、内臓を密接につなぎ、情報をやりとりしているのです。
     脊髄は背骨の中で外力からしっかり保護されているのですが、一定以上の外力、すなわち、交通事故や転落・転倒などにより、脊髄をとりまく背骨がずれたり折れたりすると、脊髄が圧迫されたり挫滅したりして、「脊髄損傷」が生じます。また、脊髄の過度の屈曲・伸展、脊髄の炎症、脊髄に行く血管の循環障害などによって損傷されることもあります。
     疾病としての脊髄損傷は、損傷の程度によって分類されます。すなわち、脊髄損傷は、損傷レベルより下位の運動機能・感覚機能をともに完全に失う「完全麻痺(まひ)」と、ある程度の運動機能あるいは感覚機能が残る「不全麻痺」の二つに分類されます。
     不全麻痺は、さらに、損傷レベルより下位の感覚機能のみ残る場合、運動機能もわずかに残るけれども実用性に乏しい場合、運動機能は一部落ちているけれども実用的である場合、腱反射に異常があっても運動機能・感覚機能・膀胱(ぼうこう)や直腸の障害に認めない場合に分けられます。
     脊髄の運動神経は頚髄(けいずい)、胸髄(きょうずい)、腰髄(ようずい)、仙髄(せんずい)から左右それぞれ8本、12本、5本、5本でており、それぞれが決まった筋肉の動きを支配しています。それで、どこまで脊髄が障害されたかで、動かせる筋肉が決まってしまいます。すなわち、脊髄損傷は損傷レベルによっても分類されます。
     完全麻痺の場合には、頚髄損傷では四肢・体幹麻痺、胸髄損傷では両下肢の麻痺と部分的体幹麻痺、腰髄損傷では両下肢麻痺となります。このように完全麻痺では、残存脊髄節高位が日常生活作業能力を決定するともいえるので、麻痺の高さのレベルの早期診断が重要です
     一方、不全麻痺では、その機能予後は、機能レベルもさることながら、その障害の重症度、筋肉の緊張度、痛みなどにも大きく影響されます。また、高齢者の場合には老化に伴う合併症の程度や個人により大きく異なる身体機能予備力にも影響されます。
     さらに脊髄損傷直後には、外傷による手足の骨折や肋骨骨折、肺の損傷や横隔膜麻痺による呼吸障害、排尿障害、排便障害、褥瘡、関節拘縮、麻痺性腸閉塞(へいそく)など合併症の予防や治療が必要になります。
     このように、脊髄損傷患者さんのリハビリでは、脊髄損傷の種類や損傷レベルを正確かつ迅速に診断し、さらに合併症や身体機能予備力も含めて障害像を評価し、対応することが重要です。
     (東北大大学院教授 上月正博氏より)
  3. ALS筋萎縮性側索硬化症・・・amyotrophic lateral sclerosisは、随意運動だけが進行性に出来なくなっていく疾患で、Charcot(1869)が初めて記載しましたので、シャルコー病の名前があります。また、米国では有名な野球選手のルー・ゲーリックがこの病気になったために、ルー・ゲーリック病ということもあります。amyotrophy(筋萎縮)という言葉は、骨格筋を支配している脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)に原因があって筋肉が萎縮してくるもの(神経原性筋萎縮)を言い、骨格筋自体の病気で筋肉が萎縮するもの(筋原性筋萎縮)は含みません。また、lateral sclerosis(側索硬化症)とは、脊髄の側索(錐体路=上位運動ニューロンの神経繊維)が変性し、グリア細胞の増殖のため硬化していることを示します。このように、筋萎縮性側索硬化症は下位運動ニューロンと上位運動ニューロンの両方を侵し、結果として筋肉の動きを低下させてくるものなのです。筋萎縮性側索硬化症では、純粋に運動神経のみが侵され、感覚神経や自律神経など、他の系統の神経は侵されません。
ケアについて・・・
  1. 吸引・・・ようするに吸い取る=バキュームの機械を利用して、口腔内や気管内の分泌物を吸い取るというケアです。
  2. 呼吸器・・・人工的に空気を送り込む装置(機械)のことです。
  3. いろう・・・ようするに胃につながる穴のこと。その穴にチューブをつないで流動食を注入します。
  4. 浣腸・・・お尻から液体(主にグリセリン)を注入し、便の排出を助けることです。
  5. 摘便・・・これまたお尻から、指を挿入し、直腸(肛門からすぐの部分)に貯留している便を取り出すことです。
  6. ガーゼ交換・・・創傷部位に貼ってあるガーゼを交換するというケアのことです。
上記ケアが必要な理由と要する場面について・・・
  1. 吸引を要するということは、喀痰を排出できない、もしくはできにくい・・・という方、もしくは口腔内を清潔に保つ必要がある方であると考えられます。その場面を考えると気管切開をされている方であったり、著しく咳嗽力の弱い方ということが言えるかと思います。ではなぜ、気管切開している方は、頻回に吸引がいるのかということも知っておかねばなりません。そして、吸引の目的である気道分泌物の除去=楽な呼吸への援助といういうこととなるのですが、その際にも「喀痰(分泌物)の発生機序」も知っておく必要があると思います。生体が持つ防御反応(のしステム)であるとか、清浄な空気、湿潤した粘膜の大切さ等などが何故大切なのかを知ることも大切です。
  2. 次に呼吸器を要する方としては、自発呼吸(自力呼吸)をする力が弱い方といえるかと思います。そうするとそのような方はどういった疾患をお持ちであるか?ということと、その疾患についても知ることが大切であると考えられます。これもその疾患を治すというのが目的ではなく、その方の「呼吸を楽にする」ということが目的であって、そこいらからの視点を持っても、医療行為ではなく「日常生活援助行為」といった捉え方ができるのではないかと考えています。そして呼吸についてはその重要性をしっかり知るということ。我々人体は多くが水(液体)により構成されていますが、空気・酸素の重要性を改めて知っておく必要があると思います。呼吸器なんかも病院内でのものであるとか、「医療機器」ではなく「日常生活用品」となって普及していけばいいのになぁと思ったりしています。
  3. いろうについては、食物が口から食べれない、もしくは食べにくい、又は食べる量が限られる(少ない)といった方が、その必要性にせまられるということとなります。嚥下が困難になってしまった方、なぜそうなっていくのか、などを考える(知る)必要があります。嚥下困難といわれる方々は、必ずしもいろうのみに頼らなければならないということもないということも合わせて知っておくことが必要かと思います。
  4. そして浣腸を要する方、この場合も当人の排泄力を助けるという行為という捉え方でいいかと思います。「便秘」という名の疾患治療という言い方もあるのですが、あえて。で、なぜ便秘傾向に陥るか?(こんな書き方をすると便秘=悪、のようですが、そうではない)ということも考えないといけません。そして、排便が生成(変な言い方ですが)される機序も知っておく必要があるのと同時に、上記ケアを行うにあたっても人体の解剖は間違いなく知っておく必要があります。
  5. 続いて摘便ですが、浣腸と同様にそれが必要な方、上記同様な知識が必要となります。
  6. ガーゼ交換については、いろんな疾患等についてまわるものですが、ここでは「褥創」についてお話したいと思います。褥創の発生機序と、それが起こる起因・誘引なども考えていきたいと思います。
それぞれのケアについての手技・・・
については実際を見ることがてっとり早い。手技以外にも、「楽に」日常の生活が送れるような工夫などもいろんな知識からアイディアは生まれます。常にその人が楽に暮らしていけるような環境を・・・といった視点でアテンダントのお仕事ができればと願っています。
参考文献
医療的ケアって大変なことなの? 下川和洋 編著 ぶどう社

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