地域生活を考えよーかい

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「今後の障害保健福祉施策について〜改革のグランドデザイン案〜」についての意見

「今後の障害保健福祉施策について〜改革のグランドデザイン案〜」についての意見書です。

作成日:2004年12月6日
掲載日:2004年12月8日
文責:NPO法人地域生活を考えよーかい
李 国本 修慈



2004年12月6日

厚生労働省障害保健福祉部
塩田 幸雄 様

NPO法人地域生活を考えよーかい
代表 李 国本 修慈

「今後の障害保健福祉施策について〜改革のグランドデザイン案〜」についての意見



 「今後の障害保健福祉施策について〜改革のグランドデザイン案〜」について、地域生活支援活動を行ってきた立場から以下に意見させていただきます。

 最初に、私どもは1990年代後半頃からしょうがい児・者といわれる方々への生活支援という活動を行ってまいりましたが、これまで先駆的な活動を行ってこられた当事者及び家人・支援者等にとって、2000年の法改正の基、掲げられた利用契約制度(支援費制度)は、長い歴史の中で、ようやく目指すべき方向に向かうものであると、その理念(規制緩和、地方分権、そして利用者主体=ノーマライゼーションに向けた)に感じたものでしたが、その支援費制度も施行開始となる2003年度までに行政主体で、理念から徐々に後退していくような組み立てがなされ、更に施行後はその組み立ての甘さ等から財源不足という結果が生まれ、更にそれを理由に、これから広がりを見せようとする制度を縮小させていくような感を抱かされたことは多くの方々が感じるところであると思います。

 そして、今回示された「グランドデザイン案」に関して、そのあまりの拙速さには、おおよそ社会福祉基礎構造改革の理念である「利用者主体(当事者参加)」というものが欠落しているのではないかと憤りを感じます。

 そういった点からも、福祉サービス提供に関わる制度については当事者団体等との充分な議論と説明が欠かせないものだと思います。

 まずは、その制度改革に至る過程の在り方を強く批判するものです。

 グランドデザインの在り方についても、その理念は当事者を始めとする関係者みなさんが要望してきたことを取り入れながらも、その内容は個別給付の抑制が目的となっているように感じます。

 繰り返し、拙速な立法化に対し、充分な時間をかけて当事者団体等との施策の在り方を議論すべきであると指摘いたします。

 さて、その内容についてですが、「各サービス共通の尺度づくりと審査会の設置」により、これまでに尊重されてきた(または主張してきた)当事者個別のニーズが反映されない支給決定がなされるのではないかと大いに危惧します。また、審査会の在り方については、その構成を専門家以外に当事者及び利用者の立場の人材も含むべきであると考えます。

 移動介護については、その個別ニーズの多さは支援費制度が始まり如実に示されたと誰もが認知できたことであると思うのですが、それを個別給付(自立支援給付)からはずし、地域生活支援事業に位置づけることは、グランドデザインでいう理念である「地域移行・社会参加」に相反する状況になるものであると私どもの活動経験からも推測できるものです。

 また、利用対象者についても、先般法案が成立しました「発達障害者支援法」の対象者である高次脳機能障害者や難病者、知的障害を持たない発達障害児・者を対象など、サービスを必要とする方々も対象とすべきだと考えます。

 更に応益負担についての「サービス利用量に応じた負担」については、障害が重いといわれる方、、支援度の高い方ほど多くの負担が求められ、所得保障が充分になされていない中での「応益負担」は大きな問題だと言わざるを得ません。また、「扶養義務負者の負担は廃止する」としながら「生計を一にする家族の負担を考慮する」ということも同様に大きな問題であるといえます。

 グループホームについては、障害の種別や程度によって、当人の生活場所が規定されるのではなく、当人の望む場所で生活ができるということがグランドデザインの理念であるはずですので、新体系による選択の不自由さは回避できるように強く望みます。

 更に、グループホーム等へのホームヘルパー派遣を想定していないようですが、個別の支援を実現していく為、生活の質を保つ点からも、間違った想定だと言えると思います。

 地域生活支援事業についても市町村のみ、又は市町村の委託事業とすることは、利用者の選択権を著しく損なうこととなり、これもグランドデザインの理念に矛盾するものであると思います。

 その他、市町村が一元的に実施主体となるという点についても、これまでの都道府県や国がバックアップするというシステムもこれまでに充分でない中、三位一体のの改革とあわせて、地域間格差はこれまで以上に広がるのではないかと危惧します。

 また、相談支援体制の確立に伴い、ケアマネジメントの導入ということですが、これについても行政からの「委託」という形ではなく、力量を持った事業者による実施が可能とし、利用者による選択が可能となるように求めます。

 今回のグランドデザイン案は、要所に当事者や関係者の方々が主張してきた事などを盛り込まれており評価できる部分もあるのですが、違和感を覚える決定的理由は、その政策決定過程に当事者、更にはそういった方々を支えようとしている支援者等の声が聞き取れていないというところです。

 社会福祉基礎構造改革という流れすらも、多くのしょうがい児・者といわれる方々やその関係者みなさんが長い年月をかけ、官民協働の産物として創りあげていこうということで生まれてきたものと理解しています。

 それを今回のような拙速かつ独自的な政策転換には、どうしても異議を唱えない訳にはいきません。

 これまでに地域生活支援活動を行ってきたものとして、2003年(支援費制度の施行開始)を境に著しく変化した事例(別添)などを通して、この改革の流れを正常化するように強く求めます。



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