地域生活を考えよーかい

地域生活を考えよーかい

第23回社会保障審議会障害者部会資料を読んで

しぇあーど利用者さん及び関係者皆さんにお正月休みの暇な時にでも読んでいただきたいと思い書いたモノ〜「障害者自立支援給付法(案)」の骨格案について〜です。

作成日:2004年12月29日
掲載日:2005年1月2日
分責:NPO法人地域生活を考えよーかい
李 国本 修慈

 年の暮れに行われました表記審議会の資料から、私的感想と解説(わかりにくいと思いますが)を羅列してみたいと思います。

 もうなんだか、すっかり手遅れ…のような感を抱かされそうな、嫌なムードですが、やっぱりおかしいところはおかしいよと、我々第三者?の人間(支援するモノ=させていただくモノ=事業者として)もきっちり言うことが必要かと…。

 まず「費用負担に関する考え方」ということで、その在り方⇒《障害福祉サービス(個別給付)に係る利用者負担の必要性》ということで、「○サービス提供未実施市町村が多く、新規の利用者が急速に増えることが見込まれる」、「○既存の利用者と新規の利用者の公平」という2点があげられており、更に「○当面、新たにサービスを利用し始める者の増加によるサービス量や、支援の必要度に応じたサービス量を確保することが必要」とあります。

 更に更に付け加えて、「必要なサービスを確保するため、制度の効率化・透明性等を進めるとともに、その費用を皆で負担し支え合うことが不可欠とあります。

 とっぱしから、ここらを見る(読む)と、支援費制度の理念であった(はず)の障害者といわれる方々主体の選べるサービスというシステムを「やっぱり見込み違いで、お金が足りないから、これ以上は(何故か)みんなで負担し支えていこう(不可欠などと書いてある)」なんてことですりかえちゃうなんて、ホントにどうなんだろうと思ってしまいます。

 ひとつ、こういった財源不足について、その見通しは如何なるものだったのか?。誤った見通し…というより、全く見通せていなかった、もしくは見通すものでもなかったのか?とも思ってしまう…です。

 どうなんでしょうか?、その見通し(量としての)は、限りなく増え続けるとは思えない(仮に一人当たりで考えても、限りない上限は一ヶ月に30日×24時間分ということで、しかも障害者(児)といわれる方や、支援(個別給付)の必要な方といえば、国民の人口の何パーセント(程度)なんでしょうか?。

 そう考えると「その費用を皆で負担し支え合うこと」については、必ずしも所得保障がなされているとはいえない(全く言えませんね)障害者(児)といわれる方々に対しても「一律・公平」などという言葉とともに負担を求めるのはちゃんちゃらおかしなことだと思えます。

 とすると、「みんなで支える」という在り方を問う時、それは税金であったり、保険であったりするのでしょうが、そういった「支えあい」方をもっと議論していくことが必要なんだと思います(どうしても財源ありき、かつ、これまでの当事者みなさんの意見を巧みに利用した財務省との駆け引きも含んだへんてこのプロセスにしかみえないのですが・・・)。

 そして、その(利用者負担の見直し)在り方として、<利用者負担>として、○在宅と施設のバランスのとれた負担、○サービスの利用量に応じた負担をあげ、<国・都道府県の負担>として、「制度的課題の解決を前提に、国及び都道府県の財政責任を強化する。」とあります。

 なかなかわかりにくい表現(制度的課題の解決を前提に…など)での責任強化ということで、何度も繰り返すのですが、「皆で負担し支えあう」という文言が、どうしても誤った「公平感(所得保障なしの同様負担)」だと思わずにはいられません(このあたりの文言を見ても、なんだか妙な駆け引きの中に負担を強いる論法で、??ですね)。

 と、今回、居宅介護についても「義務的経費へ」という諸団体の意見を取り入れた見返りのような給付抑制+負担額増には、やっぱり「むむむ…」と考えとしまうばかりで(あってはいかんのですが)す。

 で、「現行の費用徴収の仕組み(負担の不均衡)」として、居宅支援(ホームヘルプ・通所施設)と訓練等支援(入所施設)の比較を表し、ホームヘルプの負担の少なさ(不均衡)を強調?しているようです。

 そして、「支出の実態(一般家庭、グループホーム、入所施設)」という表では、その額(障害者基礎年金)と照らし合わせた比較がなされていますが、実情の生活費としては乖離する部分も多々あるのではないかと感じるのですが(グループホーム在住者については、GH学会さんがいろんなパターンの生活形態をお知らせいただいています)、これをそのまま実情に合わせると、基礎年金+αの所得内には収まらないと思うのですが…。

 次に、「障害福祉サービスに係わる利用者負担の見直しの考え方−実費負担+サービス量と所得に着目した負担−」という項目でも、居宅(ホームヘルプ・通所施設)と施設等訓練(入所)双方の支援費制度に係る負担率を比較し、双方ともに「実費負担+サービス量と所得に着目した負担」と、いわゆる応益負担の理由としているようです。

 と、周知の通りであると思いますが、食費・光熱水費というものが自己負担となるようです。

 で、「負担軽減する者の範囲(負担能力の区分)」として、生活保護、低所得1、低所得2といった事項があげられてまして、ここでも「負担軽減」という言葉を用いながら、「他制度との均衡」などということを理由に、しっかりと利用負担の徴収をすることを普遍的な仕組みとしているようです。

 「食費等の実費負担の見直しの考え方」についても、@障害があってもなくても生活していく上で負担する費用である。A施設を利用する場合でも、利用しない場合でも等しく負担することが公平であるとしてまして、ここらあたりを見る(読む)と、なんだかとっても乱暴な言い方に聞こえて仕方がないのですが…。更に、そんな中に「利用者負担の軽減への取り組み」という項目をもって、「食事提供等のコスト低減の促進」、「施設利用の低所得者への措置」として、数点の案をあげています。

 そして(ばかりですが…)、「障害福祉サービスの利用者負担の見直し」−サービス量と所得に着目−という項目では「所得にのみ着目した応能負担から、サービス量と所得に着目した負担に見直す」ということで、「○契約によりサービスを利用する者と利用しない者との公平を確保する(障害者間の公平)」、「○制度運営の効率性と安定性を確保する(障害者自らも制度を支える仕組み)」などと言い、「これと併せて、国、都道府県の財政責任の強化を図る」としています。この際にも、「負担を減額できる仕組みを導入」としていますが、やっぱり釈然としない記述(国の責任を強化する…今まではどうやったんやろ?など…)であると思わざるを得ません。

 続いて、グループホーム・入所施設に係る定率負担と個別減免が記されています。更に収入認定ということで賃金・工賃・仕送りなどがそれぞれ控除対象や全額収入として扱われることが記載されています。

 そして、ここもよく理解しにくいところなんですが、「定率負担に係る特別減額制度(生活保護への移行防止)の概要」として、上限額の適応が低くなり、生活保護受給を回避するということが記載されています。

 「今回講じた主な経過措置」として、1.地域生活関係として、@.○食費負担の給付、A.○グループホームの定率負担に係る個別減免、2、入所施設関係として、@.20才以上の入所者に対して、○食費負担について収入の範囲内での実費徴収、A.20才未満の入所者に対して、通常(地域生活をしているとすると)必要(だと考えられる)な費用負担を親等に求めるとしています。

 で、注目する(できる)ところとして、「改正案による各事業平均(マクロ)の負担の変化」という表で、現行と平成18年、更に平成21年の試算がなされていますが、例えばホームヘルプだと、改正案後(平成18年)には利用費(事業費)の0.7%が利用者負担となるようです。

 そうした負担強化に合わせて、平成17年度予算の概要が表によって示され、居宅には55%増の予算(930億円)がついたということが示されています(と言っても、実際には今年度既に二百数十億の不足ということですから割り引いて考えるところです)。

 更に(ばかりですが)注目(すべきだと思います)の「障害に係る公費負担医療制度の利用者負担見直しの必要性」という項目では、「○更正医療、育成医療の対象者の半数以上は、一定の負担能力が認められる課税世帯となり、給付の重点化が必要」とあったり、「○精神通院費、厚生医療費の対象者(人口の約1%)は急増し、財政的に極めて厳しい状況に」という記載があったりと、なかなか当人主体(基準)の負担の在り方とは思えず、「1%」などという記載にも、その「公平」の概念(というか、価値観とでも言いますか…)が、少し(と言うよりだいぶ)違うと感じてしまうのですが…。

 このあたりを考えると、少数派の方(こそ)の社会保障の在り方をしっかりと認知することが必要かと感じます。

 「不公平」という言葉を用いての医療費負担の案も一年間をかけて当事者みなさんに認知されるのかという思いです。

 そして、「障害者自立支援給付法(仮称)」(障害者サービス法改め)についてですが、まずは障害者法の一元化ということ(児童福祉法の一部も含む)。

 で、第一総訓としての「法の目的」として「この法律は、障害者及び障害児が、その有する能力を活用し、自立した日常生活又は社会生活を営むことのできるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付等を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図ることを目的とすること。」とあります。

 このあたりは改正障害者基本法などで、自助努力(自立への努力)として批判を受けた文言が「その有する能力を活用し」という言葉に代わり出てきたという感が否めません。

 市町村の責務の欄でも、その責務と対比させるカタチで当人の自助努力(もちろん就労などを含めた努力とその自助とは、家人であったり=負担の努力?と読んでしまいそうなのですが…)を強調しているように思えます。

 続いて、第二自立支援給付の項目では、「支給決定の手続き及び支給等を規定」とし、着目できる点としては、○介護給付は、訪問介護(日常生活支援、行動援護を含む)、生活支援、療護支援、児童デイサービス、短期入所、重度障害者等包括支援、共同生活介護、施設入所支援といった障害福祉サービスに要する費用の給付をいうこと。とありまして、問題視されてきた「移動介護(の個別給付の事業化)」について、「日常生活支援・行動援護」というカタチで介護給付に取り入れられたということで評価できるものかと思うのですが、その単価が重要で、「大変な暮らし」をしているのは「重度障害者包括支援」の給付対象になる方のみではなく…といったところがなかなか見えてこないように思います。

 と、もひとつの着目点としては、「自立生活支援給付」が「訓練等給付」に名前を変えたということがあげられます(けっこうその内容と照らして批判を浴びていた自立生活支援給付でしたので…ということでしょうか)。

 そして(ばかりです)、「介護給付等(介護給付、訓練等給付など)の支給決定の手続き」という項目で着目すべき点は、「○市町村は、障害程度区分、障害者等のサービス利用の意向、当該障害者等の介護を行う者の状況その他の事項を勘案して、支給決定を行うこと。この支給決定に際し、市町村は、必要に応じて、障害者給付審査会に意見を聴くことができること。この場合、障害者給付審査会は、必要に応じて、支給決定に係る障害者等、家族などの関係者の意見を聴くことができること。」とあり、支給決定は審査会による障害者区分のみによっての支給決定ではなく、障害者区分が勘案事項のひとつとなったこと(勘案事項としては障害区分・利用者等のサービス利用の意向・当該障害者等の介護を行う者の状況その他の事項を勘案して…とあります)、障害者給付審査会は「市町村が必要に応じて意見を聴く」ところという位置付けとなり、「必要に応じて、支給決定に係る障害者等、家族などの関係者の意見を聴くことができる」ようになっています。

 「介護給付等(介護給付、訓練等給付等)の支給」の項目では「○自己負担する額等については、付則において激変緩和のために必要な経過措置を定めること」とあります。

 その後は、「サービス事業者の指定」、「自立支援医療費等の支給決定、支給」項目があり、「必要な費用について、その百分の九十に相当する額を支給する」=要するに1割の負担が生ずるということが記載されています。

 第三地域生活支援事業の項目では、市町村、都道府県それぞれの地域生活支援事業の実施項目が示されています。第五では障害者福祉計画、第六では費用負担の項目と続き、第七のその他で「審査請求」として、「○介護給付等に関する処分に不服がある障害者又は障害児の保護者は、都道府県に置く障害者介護給付等不服審査会に審査請求することができること」とあります。

 そして、施行期日として「○自立支援医療(公費負担医療)の利用者負担の見直しに関する事項…平成17年10月」、「○障害福祉サービスの利用者負担並びに在宅サービスに係る費用の国及び都道府県の義務的負担化に関する事項…平成18年1月」、「○新たな事業・施設体系への移行、地域生活支援事業の実施等に関する事項、児童入所施設に関する事項(契約制、利用者負担)…平成18年10月」とあります。

 もう、平成17年もすぐそこ(これを書いているのが2004年の年の瀬でして…)ということで、いろんな変化が、すぐそこに来ようとしています。

 ほんとに時間がないですが、きっちりと情報を掴みながら、できることわ、できる限りで、と、何より、当事者みなさんが「知らぬ間」にコトが進む(変わる)ことがないようにと願っています。

 おかしな事はおかしいと言える機会と言える状況をと切に望むところです。



この文書に対する、感想、意見、各種問い合わせ

【地域生活を考えよーかい】
トップページへ戻る