私ども事業所は、営利法人として、障害者支援費制度及び介護保険による居宅介護事業と、訪問看護ステーションを運営してまして、非営利法人として、情報提供及び相談、マネジメント(障害者ケアマネジメント)、預かり・宿泊・入浴・給食・移送サービス等を行っています。 対象は主に重度重複障害児・者といわれる方々で、今回いただいた研究テーマである「NICUからの移行期および在宅療養に必要なサービスと資源のあり方」という点では合致するところがあると思い、以下に記載させていただきます。 まず現状の問題点として、私どもが関わる多くの障害児といわれる方々のほぼ全員の方(現在私どもの事業所との契約者は100名を超えています)が、重複障害者(もしくは児)ということで、福祉サービス等が、平成15年4月(支援費制度施行開始前)までは、全て児童福祉法(18歳以上の方についても)で措置されていたという経緯があり、今でも多くの成人重複障害者といわれる方々は、その医療対象科が小児科であるということがあり、更に、少数派といわれるそれらの方々の医療事態が彼らの在宅生活と連携どころか認知されていないといった実情があると感じています。 今回いただきました研究テーマにも「在宅療養」という言葉が使われていまして、私ども当人(及び家人)の「生活支援」を行うものなどから見ると、やはり「医療モデル」的な観念がどうしても医療職(研究者を含む)から拭えないといつも危惧しているところです。 私どもの訪問看護ステーションは2003年5月の開業で、今回記載させていただいた2004年10月の利用者数から更に生後数ヶ月の人工呼吸器利用の方の支援なども受けている現状です。 そういったケースの際に問題となるのは、医療職(病院)側の生活支援に対する無知さが間違いなくあげられ、私どもが関らせていただいていますしょうがい者医療(難病医療などといわれる)Dr諸氏にしても「在宅で暮らすのであれば相応のことを覚悟(母が)しないと、施設をすすめます」などと言われる方が少なくありません。 そういった類の医療職(もしくは医療従事者・関係者=私どもも含む)の人間たちが、どれほど、利用者(母子又は家人等)の心を傷つけてきているのか、ということをまずは感じることが必要かと思います。 重度心身障害児・者といわれる方々は、医学モデル的な視点でみると「病気=疾患」を持つ(または在る)方ということが言えるのでしょうが、そうではなく「個人モデル(又は社会モデル)」の視点でみていただきたい。すれば、彼らは決して「在宅療養」ではなく、極あたりまえにどなたにも在る「暮らし(生活)」を営んでいるということをきっちり認知(理解)すべきところから考えていただきたいと常に思います。 前置きが長くなりましたが、実際に「訪問看護」という、暮らしに必要なサービスを利用する際に問題となってくるのは、まずは「自己負担」の問題だと思います。 介護保険には応益負担1割での「訪問看護」サービスの利用が可能ですが、障害児といわれる方々の多くは医療費負担3割がそのまま適応され育成・更正医療費助成対象にもなっていません。 実情として利用できる(している)方々の多くは、呼吸器利用や精神保健福祉法による負担助成、もしくは難病等指定による助成を受けた方となっています。 利用者負担、それが問題であると感じます。 つづいて、私どもは、そういった「医療的ケア」(この言葉についても昨今のALSの方々を対象とした在宅療養の支援についてなどで取り上げられているのですが、そこでも「医療モデル」的視点が多くの在宅生活を営む方々にとって、その暮らしがより普通になることを停滞させているように感じます)というものを必要とされる方々の支援を重点的に行っていますが、その「暮らし(極あたりまえの)」を希望する方への支援の量が圧倒的に不足していること、それを訪問看護によって、支援者(多くは家人とヘルパー)の支援(知識およびスキルと意識の普及伝達)を行っている訳ですが、訪問看護の役割として、そういった方々(利用者および支援者)への「相談」を私どもは重視しているのですが、何より使い勝手の悪い訪問看護が、しょうがい児・者といわれる方々やその家人等に必要な「相談・マネジメント」提供機会を阻害していると考えています。 そういった観点から、今後の課題としては、医療従事者(および関係者)への意識改革=医療モデル視点から個人モデル・社会モデルへの転換と、使い勝手のよい訪問看護サービスの制度改革、更に柔軟なカタチでの通所看護スペースを作りたいと考えています。 なにより、少数な方々のニーズを的確に掴む感性のある訪問看護ステーションが増える(増やす。については、他事業者への支援活動なども行っています)ことが課題であると考えています。 |
私どもの事業所では、前問でも記載しましたように、障害児・者といわれる方々の利用がそのほとんどを占めていまして、現在(1/5現在)におきましても、障害福祉施策が大きな変革案を持って行われようとしていますが、その中でも育成・更正医療費の定率(応益)負担が来年(平成18年)1月から開始されるということや、大幅な利用サービス単価の減額及び、個人給付量の削減など、おおよそ当事者の意見の反映がなされない拙速な施策決定過程となっているように思います。 訪問看護、医療にしても、何度も繰り返しますが、医療モデルでなく個人モデルとしての視点で、当事者の望む暮らしの支援サービスのひとつとしての位置づけを明確にしてほしいという思いで、そのためにまずありきは所得保障であり、続いてサービス財源の確保(税または保険)であると思います。 ぜひ、研究者諸氏におきましても、そういった極少数な方々の実際の暮らしを目にしていただき、目的を定めていただきたいと思います。 当事者の声(決して扶養義務者=親の声ではない)を充分に反映させる政策決定であることを望みます。 |