地域生活を考えよーかい

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医療的ケアについて
〜その責任(依頼者・事業者・実施者としての)を考える〜

西宮市のメインストリーム協会さん・アテンダント研修会での「医療的ケアについて」の一資料です。
資料(参考:池浩一郎氏/みやぎ障害福祉メモ)

掲載日:2006年2月17日(金)
作成:地域生活を考えよーかい
李 国本 修慈

 「医療的」ケアについて語る際、よく(多く)疑問(あるいは問題、ないしは課題)とされる「責任」の所在について、少し考えてみたいと思います。
 「医療的ケア」については、これまでにお話しした通り。
 その名称(呼び方)も様々であるということ。まずは、その捉え方としての意識の持ち方は必要かと思います。
 それを「違法」とする根拠は「医師法」(17条/昭和23年法律第201号)= 「医師でなければ、医業をなしてはならない」。
 で、「医業」とはお話しした通りの、以下。

(1) 当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある行為(「医行為」)を、

(2) 反復継続し、またはその意思をもって行うこと(「業として行うこと」)。
 参考資料【「医行為」について
 平成15年4月15日の第6回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会で、「違法性の阻却」要因が示された。
 参考資料【第6回看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会資料
 正当化される要件として、以下。

  1. 目的の正当化
  2. 手段の相当性
  3. 法益衡量
  4. 法益侵害の相対的軽微性
  5. 必要性・緊急性

 2004年9月には、在宅及び養護学校における日常的な医療の医学的・法律学的整理に関する研究会"(2004.6.11. 〜 2004.9.17.)の報告(盲・聾・養護学校におけるたんの吸引等の医学的・法律学的整理に関する取りまとめ)を受けて、厚生労働省・文部科学省の通知が出る。

 それらに対して、大塚孝司氏(人工呼吸器をつけた子の親の会/バクバクの会・会長)の意見書によると、以下。

 "違法性の阻却"を越えて
 "当事者主権から「医療行為」を考える重要性 "
 "日常的に必要なケアのうち「医療行為」と呼ばれるものも、十分な研修によって「人体に危害を及ぼすおそれ」がなくなった時点で、その性質が「生活支援行為」へと変化し、医療従事者でない家族や家族以外の者であっても行為を実施できるのだと私たちは考えます。"
 "「当事者主権」および「研修」をキーワードとして考える。"
 平成16年11月26日(金)親の会連絡会医療的ケア連絡会ヒアリングから。
 そして、平成17年7月26日に、厚生労働省医政局長より各都道府県知事、社団法人日本病院会会長、文部省初等中等教育局長・同スポーツ・青少年教育局長、各宛に通知が出されました。
 参考資料【医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈にてついて
 で、実際を考えてみたいのですか、あくまでも私見として。
 法に関しては、ものすごく古くにできた法律である「医師法」を根拠に、いろんな事が論じられていると思います。
 上記の様々な資料から、いろんな事が読み取れると思うのですが、「責任」というのは
「コトがおこった時」に、それ(責任)が、どこにあるのか?ということ。
 「阻却の要因」等が語られているのですが、それは業務であるから。
 業務であるが故に「過失」の際の責任が生じる。
 我々の活動は、ほんとに紛らわしい程の「業」と「支え(支援=かならずしも業ではない)」が混在しているものであるかと考えています。
 おそらく、以前の「全身性介護人派遣制度」などの時代には、当事者の依頼責任のみが、その大抵を担っていたように思います。
 それは、「家人介護」に置いても、よく似た形態のような気がします。
 家人だから(あるいは、自らが選んだ=求めた介助者だから)、責任は問わない(問えないのではなく)、と、言ったような。
 例えば「こんな夜更けにバナナかよ」(北海道新聞社:渡辺一史:2003年3月31日発刊)の鹿野氏にみられるような。
 ただ、なんとなく、変なことになっちゃうのは、その関係→依頼者と実施者が、家人や、それに代わるもの(というか、それ以上だったりするモノ)にはなれていないということ、すなわち、「業」として対価を得ているから?といったことは、すぐに考え付くように思います。
 何を言わんか…なんですが、「コトが起こった」際に、その当事者、あるいは関係者(家人等か?)が、その責任を問うのか?といったこと、も重要なことかと考えます。
 かと言って、「過失」という点では、ライセンスがあろうが、無かろうが、あまり関係ないと言っていいと私は思っています。
 そういう意味では、鈴木康之さん(東京小児療育病院)の言う「実施しない責任」こそが問われるのではないのか?とも思います。
 ただ、それを肯定するには、実施者等の責任として、大塚さん(バクバクの会・会長)の言う、「充分な研修」は不可欠であると思いますし、如何に、当人(及び家人)との、信頼関係=依頼/応答のカタチができているのか、が、必須であると考えています。
 何より、目の前の人が望むことを「するのか、しないのか」、そんな視点があれば、おのずと答えは見えてくるのでは?と思うのですが…。


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