地域生活を考えよーかい

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重症心身障害児といわれる方々の養護学校卒業後の進路について

こうのいけスペースに実習に来られた養護学校高等部3年生Tくんと担任教諭さん、おかあさんとお話しした内容です。

作成日:2007年11月6日(火)
掲載日:2007年11月6日(火)
分責:特定非営利活動法人地域生活を考えよーかい

 このテーマについて考える際に、思いつく点として、近隣市町共通の「悩み」として、「進路先が見つからない(見つけにくい)」、あるいは「見つけられない」ということ。
 もちろん、その理由は、その「場」自体の少なさ、更には、その少ない場所の「許容量の問題(定員を既に満たしている)」ということが、簡単に思い浮かんでくる。
 では何故、そういった場所は、増えていかないのであろうか?と考えると、やはり、その理由は、この事業が行政主導による「コストに依る」というところに行き着いてしまう。
また、少数派ということも、その理由になるのかも知れない。
 現行制度(主に障害者自立支援法を指す)で、障害児、特に重症心身障害児といわれる方々の卒後の「日中活動の場」を新たに作ろうとするのは、かなりの困難を極める。
 その理由は、活動定員の問題、福祉基礎構造改革の中での小規模法人(NPOなど)の財政基盤の脆弱さ等といったことがあげられる。
 もちろん、先見的な計画を持ってすれば、100%不可能ということではなく、地域生活支援センターから、通所(生活介護)施設へとの移行を行うことも可能であるが、そこには莫大な労力と財力も要すること、何より時間を要すということがいえそうである。
 更に、養護学校を卒業する方々が、毎年、少しずつ増えるということも、そういった計画を困難にさせているようにも考えられる。
 そもそも、少数派の方への財源を確保するほど、各自治体の財政基盤は磐石ではなく、更にそんな中で、財務及び市民のコンセンサスも得にくいということも間違いなくあるようだ。
 では、どうすればいいのか?ということであるが、本来(?自ら考えつくことに、自ら疑問視してしまうのだが)、自治体が保障していくべきコトであるという考えから、外郭団体(社協、事業団など)が、もっと力を入れてもいいものであると思われる(実際に、力を入れてはいるのであろうが、「もっと」という思いは拭えない)が、決して追い着かない、不足しているという現状(というよりも、当時=利用契約制度の法律成立の2000年の予測)の中、先にも記した福祉基礎構造改革が柱とした、「地方分権」と「規制緩和」の双方ともが、真の意味で、凡そ機能せず(できず)に経過したということが、やはり最大の問題であると考えられる。
 現状の周辺環境を見ると如何だろうか?。
 伊丹市では、いよいよ障害者福祉センターでの日中活動(生活介護)受け入れ体制も限界に近付き、前年度からは、週5回の通所が保障できなくなり、今年度からは、日数制限(週における通所日数の)が行われるようになった。
 他に生活介護施設等はなく(現在のセンター拡充の計画はあるらしい)、市内作業所も、重症心身障害児、ましてや医療的ケアを要するとされる方々の受け入れ先は見当たらない。
 西宮市では、社会福祉協議会における青葉園も定員を満たしているという状況で、ここ数年、新たな社会資源も増えている(社会福祉法人等によるデイ・サービス、重症心身障害児・者通園事業の拡大等)が、それでも、決して充足しているという状況ではなく、毎年、養護学校卒業生の進路先の決定には苦慮しているという状況である。
 尼崎は、更に困窮のように見えるのだが、歴史的な経緯から、作業所が、その役割を担ってきたともいえ、近年にできた「身体障害者デイサービスセンター」や、多くの方が通う「通園室つばさ」(重症心身障害者通園事業)も、同様な役割を担っているのだが、他市と同様、進路先を数ある中から選択できるといった状況にはないといえる。
 そういった現状の中で、今、考えられるのが、「移動支援(市町村地域生活支援事業/移動支援事業)」を利用しての「日中活動」。
 近年オープンした尼崎の「ジャム・ルガ」では、重症心身障害者といわれる方々が、その手法で、日中活動を行うことを実践している。
 西宮でも、「西宮のまネット(障害者あんしん相談窓口)」が、卒後進路の定まらない方々を対象に、同様の手法で、日中活動機会をプロデュースしている。
 私ども、しぇあーども、上記(西宮の)取り組みに係わったり、伊丹市において、日中活動が保障されない方々への支援として、活動機会創出の取り組みを行っている。
 卒後の日中活動の場として、これまでにあった「作業所」や「通所施設」のみではない、上記活動等が存在することに異論はないであろうし、むしろ意義があるものと考えられる(もちろん活動等におけるデメリットなども含んではいるのだが)。
 只、そういった活動を担える活動体(事業者)も、なかなか増えない現状があるということも事実であり、その理由も明白だが、好転していく気配も乏しいものである。
 更に、大きな問題は、超重症児などといわれる方々の問題。
 医療的ケアといわれる支援が必要な方々のそれは、更に困難を極めるもので、就学前の方、訪問教育を受けておられる方等と同様に大きな課題である。
 そういった方々も、例えば「砂子療育園」(社福/甲山福祉センター)における就学前重症児への取り組み(さくらんぼ)や、同法人における(前述の)「通園室つばさ」での受け入れがあるが、卒後、進路の定まらない方が選べる活動場所は皆無に近い状況である。
 今後の模索しては、「療養通所介護」としての支援のカタチなどを考えているが、現状の制度設計では、看護師等の確保・雇用等もままならないといった状況であり、なかなか「進路先」の不安は解消されそうにない。
 そういった点からも、例えば「自立支援協議会」や、更なる市町、あるいは圏域での細かな取り組みが必要で、「地方分権」と「規制緩和」が、真の意味で機能するシステム構築をしっかり行える自治体を創りあげることが望まれるのだが…。
 ともあれ、来春卒業されるみなさんが、望んで進める場が決まることを切望するところである。

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