地域生活を考えよーかい

地域生活を考えよーかい

「地域生活支援活動の現状から福祉有償運送の今後の課題を探る」セミナーに参加して

関西STSセミナー参加報告書です。

作成日:2007年11月12日(月)
掲載日:2007年12月8日(土)
分責:中根 昭彦

1.参加日時

  平成19年11月11日(日)10:30〜14:30

2.セミナー内容

  @現場からの報告   

  1. 「大阪府の福祉有償運送に係る運営の現状況」
  2. 「三重県の福祉有償運送普及促進支援事業の模索」
  3. 「大阪福祉タクシー総合配車センターの事業計画」
  4. 「枚方市・共同配車センター事業(福祉移送サービス)の現況と課題」

  A講演「改正道路運送法・自家用有償旅客運送の現状と課題」

3.所感

 道路交通法が改正されて1年が経過し、福祉有償運送全般についての問題提起、課題の再確認を行うセミナーでした。
 地域生活を考えよーかいでは現在、福祉有償運送は準備中の位置づけで利用者様の送迎は無償運送(ボランティア輸送)で行っているので、有償運送に移行する際、どのような課題があり、それをクリアするためにどうすればいいのか、のヒントを探る意味でセミナーに参加しました。
 大阪府や三重県、そしてセダン特区の枚方市の話で共通する課題は、運営協議会の機能が働いていないことでした。運営協議会がNPOや社会福祉法人とタクシー業界の利害調整、つまり対立している立場の調整でしかなく、地域の移動困難者に対して公共交通機関(バス、タクシー)と福祉有償運送がどう連携し、安全・安心そして快適な移動を安価でどのように提供するか、のような議論には至っていないというのが現状のようです。これは昨年参加した阪神地区の運営協議会でもそう感じました。
 公共交通機関のユニバーサル化がもっと進み、十分な数の車両があり、利用頻度の高い方でも負担が軽くて使える料金設定であれば、移動困難者は大幅に減ってくると思うのですが、自家用車の普及で公共交通機関の利用が減り、予算も同じように減っている現状では難しいです。そこで、福祉有償運送があるのですが、タクシー業界からすれば、悪く言うと「客泥棒」となり、お互いの立場は近くなっていません。この問題が一番大きく深いものであると感じました。
 また、安全・安心を担保するための登録審査や日々の運行管理などの多大な事務量がNPOなど少人数で専門のスタッフがいない事業者にとって大きな負担になっています。もっと始めやすく、続けやすいものであればいいのですが、このあたりもNPO(社福)側と行政側で考え方の大きな隔たりがあるようです。
以下にセミナー項目の中で印象に残ったことを記載します。

  1. 「大阪府の福祉有償運送に係る運営の現状況」では大阪府の福祉有償の状況についての報告で、セダン特区の枚方市は別として、全5区のうち北摂地区や泉州地区でセダンが認められていることでした。なぜ、認められたかの報告はなかったので詳細は不明ですが、特区以外でもセダンがいけることが印象に残りました。
  2. 「三重県の福祉有償運送普及促進支援事業の模索」では、大阪よりもさらにセダンが稼働しています。稼働している車両の6割がセダンで4割が福祉車両になっています。これは公共交通機関の少なさが影響しているようです。事業データの他に利用者からの苦情の具体例が報告されました。車体表示についての苦情(事業所名、有償運送の表示がない)や、運転者が喫煙しながら携帯電話をかけて運転していた、というのがありました。福祉有償運送は地域の理解がないと行いにくい事業であることは明白なので、気をつけなければならない点だと思います。
  3. 「大阪福祉タクシー総合配車センターの事業計画」では大阪の福祉タクシー総合配車センターについての報告でした。これは福祉輸送普及促進のモデル事業で今年の11月1日に全国初の認定を受けた事業です。セミナー開催時では稼働していませんでしたが、コンセプトの説明がありました。配車センターを作ることにより、使いたいときにすぐ使えるという課題はクリアしやすくはなりますが、迎車回送料金が1000円で料金は別に30分2,400円(中型)もかかってしまい、いつも使えるものではないと感じました。
  4. 「枚方市・共同配車センター事業(福祉移送サービス)の現況と課題」ではNPO側からの報告で共感できることが多くありました。「道路運送法の改正で国交省認定の講習会に時間がかかり、運転ボランティアの方が自ら受講料を負担してまで受講してくれるのか、今後運転ボランティアが増えるかどうかが懸念される」、や、「福祉移送サービスの料金設定はタクシー料金の概ね1/2程度とされており、事業採算的に難しい側面がある。このため介護事業と福祉移送サービスと併せて実施する多くの事業所は、自身の介護事業の「通院」などの身体介護との抱き合わせがない移送サービスの利用を敬遠する傾向があり、移送サービスが介護事業の補完的な役割になってしまい、「移動保証」が抱き合わせでないとできない大きな課題である」などです。財源をどうするかが大きな課題であると感じました。

A講演「改正道路運送法・自家用有償旅客運送の現状と課題」では国土交通省自動車交通局・旅客課長の藤田氏より、改正道路運送法についての説明がありました。説明の中で、「安全・安心」の保証が幾度も話されており、「始めやすく、続けやすい」を目指すNPO側との距離を感じました。最後に無償運送についての説明があり、国交省としては無償運送の範囲を広げるよりも有償運送の登録をやりやすくしたい、そのための具体的な意見がほしいとのことでした。

時間の関係上、ここまでしか参加できず、質疑応答や討論などは聞けなかったのですが、他府県の実情について知ることができたのは今後、有償運送を開始するに当たり、参考になると思います。地域生活をかんがえよーかいでの有償運送はセミナーであったような事業のカタチとは少し違う部分もありますが、利用者の方が安心・安全・使いやすい、サービスになるよう検討していきます。

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